欧米富裕層の間では大腸癌は激減しましたが、欧米より大腸内視鏡が盛んな日本で大腸癌の増加が止まりません。欧米の富裕層が受ける内視鏡は時間をかけて前癌病変を全て、切除します(クリーン・コロン)が、日本では、「件数が多く流れ作業となり質の低下」が問題視されています。



(1)死角への対策(2)前癌病変の完全切除(3)高危険群の管理、が精度改良の柱です

 (1)大腸内視鏡の死角は、一般の方が考えるよりも遥かに多く、これが「内視鏡後・大腸癌」の最大の原因です。これは、医師の経験不足、腸の解剖学的な理由、腸内の洗浄不良、観察時間の不足などが原因です
(2)前癌病変の
不完全切除も意外に多く「内視鏡後・大腸癌」の2割は、これが原因です。技術的な完全切除の失敗だけでなく、医師が病変の危険性を過小評価し「放置」する場合もあります
(3)「内視鏡後・大腸癌のリスク」は患者さんの
体質で大きく違います。これを正確に予測することは対策の基本になります。最も重要なのが遺伝性大腸癌(HNPCC)の方への対策です

(1)死角への対策

  1. 観察(抜去)時間の大幅延長詳しく
  2. 腸管を伸展しながら観察(Optimal distention)(詳しく
  3. 頻繁な体位変換(詳しく
  4. 屈曲部の往復(詳しく
  5. 過長結腸・癒着症例への観察時間延長(詳しく
  6. 右上体位による上行〜肝湾曲部観察(詳しく
  7. 色素散布による虫垂、回盲弁周囲の観察(詳しく
  8. 左上体位による脾湾曲〜SD観察(詳しく
  9. 患者さんがモニターを見ることの意義(詳しく
  10. 過去のInterval Cancer(内視鏡後・大腸癌)の研究(詳しく
  11. Index Lesionを反省し研究(詳しく
  12. Interval Cancer好発部位の往復観察(詳しく
  13. 特に肝湾曲部とRSの体位変換・往復観察(詳しく
  14. 上行SSAPへの注意(詳しく
  15. 虫垂SSAPへの注意(詳しく
  16. 回盲弁上、憩室内腺腫への注意(詳しく
  17. 小腸柔毛の写真撮影(詳しく
  18. 上行・横行LSTへの注意(詳しく
  19. 横行屈曲部(ねじれ腸)の往復観察(詳しく
  20. RS裏側への注意(詳しく
  21. 直腸微小カルチノイドに注意する(詳しく
  22. 色素(インジゴ)散布のルチーン化(詳しく
  23. 先端フード使用(詳しく
  24. 鎮痙剤(ブスコパン)使用(詳しく
  25. 無送気挿入法からWater Exchange法への変更詳しく
  26. 洗浄液の増量(詳しく
  27. 医師の集中力維持のための工夫(詳しく
  28. ベテラン看護師、AIによる観察のダブルチェック(詳しく
  29. 腺腫発見率の定期的公開詳しく
  30. 抜去時間の開示詳しく
  31. 患者さんへの死角の理由の説明<Leiden Qality Score>(詳しく
  32. 高度死角例へのCTコロノグラフィー併用の推奨(詳しく
  33. 便潜血検査併用の意義の説明と推奨(詳しく

(2)前癌病変の完全切除

  1. 切除ポリープ数の大幅増加詳しく
  2. 微小病変を放置しない(詳しく
  3. COLD法の導入(詳しく
  4. Extended Cold法の導入詳しく
  5. 切除創の詳細観察(詳しく
  6. CSDPの除去(詳しく
  7. 辺縁の十分なトリミング(詳しく
  8. Discard Policyによる効率化(詳しく
  9. 米国のガイドラインを重視する(詳しく
  10. 過形成ポリープの安易な放置をしない(詳しく
  11. Proximal Hyperの完全切除詳しく
  12. TSA型Hyperの完全切除(詳しく
  13. EMT型Hyperの完全切除(詳しく
  14. 陥凹型Hyperの完全切除(詳しく
  15. HNPCC 状態での微少ポリープの完全切除(詳しく
  16. 成人の過誤腫型ポリープの完全切除(詳しく

(3)高危険群の管理

  1. A〜Eランクによる明白なリスクの階層化(詳しく
  2. リスクに応じた適切な検査間隔の設定(詳しく
  3. ハイリスクグループの診断詳しく
  4. リスクの告知(詳しく
  5. HNPCCの厳重管理(詳しく
  6. HNPCC状態の概念の導入(詳しく
  7. SPSの厳重管理(詳しく
  8. MSP(Multiple Serrated Polyps)の診断概念の導入(詳しく
  9. Proximal Hyperで粘膜の老化を読む(詳しく
  10. 時間軸を入れたリスク評価(詳しく
  11. アスピリンの推奨(詳しく
  12. メトホルミンの推奨(詳しく
  13. 禁煙、運動の推奨(詳しく
  14. 毎年の便潜血の推奨(詳しく
  15. 他の癌検診の推奨(詳しく
  16. ロー・リスクグループへの対応「内視鏡を止め、便潜血検査への切り替え」の推奨(詳しく
  17. USBによる全内視鏡写真の提供(セカンドオピニオンの容易化)(詳しく
  18. 「木を見て森を見ない内視鏡」から「大腸から全身を診る内視鏡」へ(詳しく
  19. 内視鏡の検診間隔は米国ガイドラインを推奨する(過剰検診の防止)(詳しく
 逸話)大腸内視鏡の精度管理のきっかけは、サプリメントだった


2010年頃までは大腸内視鏡の品質管理という概念はありませんでした
(1)大腸癌の診断は容易であり時間が短くても見落とすことは無い
(2)前癌病変(ポリープ)は癌化するのに10年かかり、簡単には癌化しないのだから見落としは深刻な問題ではない
(3)それなら検査に時間をかけずに、多くの患者さんの検査を処理するべきである
というのが常識でした。

ところが・・・・
米国で「サプリメントの癌予防効果」を調べる試験が行われました。ポリープを切除し、サプリメントを服用して1年後のポリープの再発率を調べるという研究です。ほとんどのサプリメントは「効果無し」でした。
試験には「副産物」がありました。1年後に内視鏡を施行すると(サプリメントを服用した人も偽薬を服用した人も)、かなりの割合で進行癌が見つかることが解ったのです。そして、大腸内視鏡の品質管理の問題へと発展しました


文献
 サプリメントの大腸癌予防効果
を調べた研究報告
 内視鏡を受けた患者さんが、1年後に進行した癌(浸潤癌)が見つかった頻度
Antioxidant Polyp Prevention Study N Engl J Med. 1994 700人に一人
Calcium Polyp Prevention Study N Engl J Med. 1999 450人に一人
Polyp Prevention Trial Study N Engl J Med. 2000 700人に一人
Wheat Bran Fiber study N Engl J Med. 2000 550人に一人
Veterans Affairs Cooperative Study N Engl J Med. 2000   500人に一人
Aspirin Folate Trial7 N Engl J Med. 2003 500人に一人
Ursodeoxycholic Acid study J Natl Cancer Inst. 2005 500人に一人