はじめに


もし医師が「内視鏡は完全消毒しているので安全です」と言ったら、それは航空会社が「飛行機は落ちません」と言うのと同じです。

消毒を強化することで「感染の可能性」は指数関数的に小さくなりますが「ゼロ」になることは無いです

「感染の可能性」よりも「胃癌・大腸癌の危険」の方がはるかに高い場合に内視鏡検査を受けるメリットが保証されます。



内視鏡消毒の問題点は、次の2点です
(1)ステンレス製手術器具と異なり精密機械の内視鏡を100%完全に消毒(滅菌)することは現代の技術では不可能である

(2)現在の消毒法は「消毒実験可能な病原体」のみでしか効果が確認されていない。未知の病原体を含め「実験不可能な病原体(特にウイルス)」には効果が不明

4つの消毒薬(フタラール、過酢酸、酸性水、アルコール)を、全て使用する意義は?
安全マージンは必要?過剰?
最初に核心となるコンセプトを述べます。

「既知の調査済み病原体は全て5分間消毒で死滅したので、消毒は5分でよい」という考えが現在の「標準的消毒(高レベル消毒)」の根拠です。

「既知の調査済み病原体は全て5分間消毒で死滅したので、その5倍の消毒をすれば未調査、未知の病原体の効果も十分に期待できる(安全マージン)」というのがステリスシステムの根拠です。

 

定説として、フタラールまたは過酢酸で5分間消毒すれば十分とされています。これで、肝炎、エイズなどの「内視鏡を介して感染を起こす既知の病原体」は全て死滅するからです(高レベル消毒薬)。しかし、これは「100%の安全」を保証している訳ではありません。

では、「未知の病原体」までターゲットにした場合に「現時点で、できる最大の防衛策」は何でしょう?・・・・単一の消毒薬で「消毒時間を無意味に延長する」のは、有効ではありません。攻撃目標の違う複数の消毒剤を組み合わせるのが「最善の攻撃」です。これが多剤併用の科学的根拠です。別な言い方をすれば「耐性菌」への対策です。ステリスシステムでは、4種類の消毒薬を併用し消毒時間も標準の2〜3倍にします。

現在の「標準的消毒法(高レベル消毒)」=過酢酸またはフタラールで5分間消毒する。
「ステリスシステム」=過酢酸10分消毒+フタラール15分消毒+強酸性水消毒+アルコール消毒。
(標準の5倍以上の消毒) 各ステップの詳細

具体的な例で解説します

これは、コンジローマという皮膚病で、癌化することがあります。
原因はパピローマというウイルスで、伝染病(性行為感染症)です。

では、現在の「標準的消毒」で
パピローマは、死滅するでしょうか?

・・・・・・・・・解答はこちらです。

 

消毒剤併用、時間延長の根拠の詳しい解説(長文)はこちらを・・・・

消毒液交換の時期について詳しくはこちらを・・・・・




高圧煮沸できない内視鏡は本当の意味では「無菌」にはできません。これは精密機械の宿命です。これを、薬液消毒で「無菌=sterilization」に限りなく近くする。これが「ステリス」の命名の由来です。消毒費用の詳細

処置具を「使い捨て」にする意義は?


処置具とは細胞検査やポリープ切除をおこなう器具です。これらは粘膜を傷つけますからメスや注射針と本質的に同じで、内視鏡本体よりも遥かに厳しい消毒が必要です。

国内ではまだ、処置具を消毒して再使用するのが普通ですが、米国では「使い捨て」が標準です。当院では「使い捨て」を標準にしています。絶対に安全だからです。この方針は上記の多剤併用と同じく「消毒の安全性は、100%ではない」という考えから来たものです。

昔、資源が乏しかった頃、日本でも注射針やメスが消毒後再使用されていました。しかし、今日では「使い捨て」が標準です 内視鏡処置具(細胞検査をする器具)の先端部です。処置具は、実は注射針やメスと、同じものであることがわかります
 

新品の使い捨て処置具であることの保証
最近、「使い捨て用の処置具を再利用している病院が多い」という違法行為が報道され問題になりました。(これは病院に大きな利益をもたらします)

当院では違法行為が無いことを保証するため
(1)使用時に新品を患者さんが見ている前で開封する
(2)希望される方には使用した処置具を差し上げる
・・・・・・こととしています

より詳しい解説(長文)はこちらを・・・・
 

 

今まで軽視されていた「消毒の盲点」とは?

 

外科手術は完全な無菌スペースでおこなわれます。内視鏡は手術ほどの「無菌性」は必要ありませんし現実的に不可能です。内視鏡で要求される清潔とは「患者さん同士の粘液の交差をゼロにする」ことです。この部分は、従来、軽視されてきましたが、当院独自に、以下のような工夫をしています。


これは大腸検査の模様です。内視鏡に接触する可能性のあるもの(=体液の交差が起きる可能性のあるもの)は(A)患者さんの検査着(B)医師の検査着類(C)検査台に広げるシーツ(D)内視鏡の操作パネルの4つです。

(A)(B)(C)全てを、患者さん1例ごとに新品(使い捨て)を使用します。


(D)の内視鏡機械の操作パネルは精密機械で消毒ができません。ここは「盲点」です。ラップとビニールテープで全面を覆い1例ごとに消毒します。(ラップとテープは1日1回交換します。)

その他、ブラッシング、送水器具、検体取り扱い
など、多くの「盲点」を洗い出しました。詳しい解説はこちらを・・・・
プリオンへの対策

この「現在の科学技術で最強の消毒薬」を全て駆使しても死滅しない病原体が一つあります。
・・・・狂牛病、ヤコブ病(そして・・おそらくアルツファイマー病)の原因で遺伝子を持たないタンパク質からなる「プリオン」です

プリオンへの対策は従来の消毒と根本的に考え方を変えなければなりません。

当院は、日本で唯一つ、この問題を真剣に取り組み、プリオン感染防止対策を講じた医療機関です

詳しい解説はこちらを・・・・

 

ステリス質問集

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