検査前に血液検査をしなくていいのですか?
まず、はじめに「検査前感染症検査」といっても、いろいろな病気を調べるわけではありません。正しくは「B型肝炎、エイズ、梅毒の3つについて調べる」という意味です()あらゆる感染症の有無がわかる血液検査があれば有益ですが、そのような検査はありません。このような習慣は以前グルタール アルデヒドで消毒していた時代の名残です。グルタール アルデヒドでは消毒に時間がかかるため全検査に消毒するのは大変なので検査前の血液検査で病気の人(正確には肝炎、エイズ、梅毒の患者さん)を振り分けてグルタールアルデヒド消毒を選択的に使っていた訳です。しかし、血液検査でわからない病気がたくさんありますから、肝炎、エイズ、梅毒だけ調べて消毒法をわけるのでなく「全員に対し同じように完全消毒する(全検査間高レベル消毒」というのが正しい方法です。

学会で定められた標準的消毒法(フタラール、過酢酸、酸性水のいずれかで5分間消毒する)なら肝炎、エイズ、梅毒は確実に死滅します。(実はこれらは「消毒に弱い病原体」です 詳しく・・・・ )。

標準的消毒法の3倍の効果のある当院の消毒システムは「血液検査でわからない病原体。消毒に強い、未知の病原体」を標的にしています。

したがって、検査前に肝炎、エイズ、梅毒の血液検査をすることは全く意味がありません。

なぜ検査前に「肝炎、エイズ、梅毒の3つを調べる習慣」ができたか?・・・これは、歴史的な背景(梅毒は手術前に調べる慣習があったから、肝炎は内視鏡学会で1970年代後半に話題になったから、エイズは社会の関心が高いから)からきたものです。しかし、この3つを特別扱いし、「この3つが陰性なら、とりあえず大丈夫」と判断するのは科学的に根拠はありません。内視鏡を介して感染を起こす脅威としてはピロリ菌(胃癌の原因)、パピローマウイルス(口腔、食道、肛門癌の原因)、EBウイルス(咽頭癌の原因)なども問題ですが血液検査ではわかりません(・・・仮に可能でも、全てを調べるのは非現実的です)。

 

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