処置具につきまして
処置具とは細胞検査やポリープ切除をおこなう器具です。これらは粘膜を傷つけますからメスや注射針と本質的に同じものです。内視鏡本体よりも遥かに厳しい消毒が必要です。ちなみに過去に報告された内視鏡の感染事故の多くは処置具が原因と言われています。) 処置具の消毒法は2つあります

オートクレーブ(高圧煮沸)で消毒する 現在の日本の標準的な方法
一回ごと新品を使い捨てにする 米国で一般的な方法

通常はオートクレーブで生き残る病原体は、無いのでオートクレーブで問題無いとされ、ガイドラインでも「どちらでもよい」となっています。

しかし・・・・エピソードを2つ紹介します
<エピソード1>昔、資源が乏しかった頃、日本でも注射針が消毒後、再使用されていました(今日は「1回限り使い捨て」が常識です)。オートクレーブが完全なら、針の中のウイルスでも死滅するから問題ないと考えられました。しかし、再使用の針が原因で肝炎の感染事故が起きました。おそらくオートクレーブが不十分となる、人的、機械的なエラー(機械の温度が不十分だったなど・・・)があったものと思われます。


<エピソード2>「変異型 ヤコブ病(狂牛病)」では、細胞検査やポリープ切除を行うと処置具がプリオン蛋白で汚染される可能性があります。この場合は
前出の高レベル消毒(過酢酸、フタラール)でもオートクレーブでも消毒されません。 2001年9月フランス厚生省は「内視鏡処置具は、使い捨てにすべきで、消毒後再使用してはいけない」と法律で制限しました。・・・・プリオンと内視鏡消毒について詳しく

二つのエピソードは処置具消毒の問題の本質を象徴しています。つまり「可能性が極めて低いが、わずかのエラーが重大事故につながる」ということです。

これが使い捨て処置具(エラー=0%)が推奨される理由です

当院も以前は オートクレーブ法でしたが現在は 「一回ごと使い捨て」を採用しています。このため、細胞検査やポリープ切除を、おこなった場合、使い捨て処置具の実費のご負担をお願いしています

新品の使い捨て処置具であることの保証
最近、「使い捨て用の処置具を再利用している病院が多い」という違法行為が報道され問題になりました。使い捨ては単価が安いので、このような行為は病院に大きな利益をもたらします。実は欧米でも同じ問題が発生しています。

資料)内視鏡学会でおこなったアンケートより・・・内視鏡手術の場合94%が、内視鏡検査の場合50%の施設が使い捨て用の処置具を消毒して再利用している。(参考 金原出版「内視鏡機器の洗浄・消毒の実際」)

しかし、これは、不当利益よりも、もっと深刻な問題です。使い捨て用の処置具は、本来、消毒できる構造にはなっていない(オートクレーブできない!)のです。つまり再使用している施設では、簡易な消毒しかしないで針と同じ処置具を再使用していた、ということです。

当院では違法行為が無いことを保証するため(1)使用時に新品を患者さんが見ている前で開封する(2)使用した処置具を差し上げることとしています


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