プリオンと消化器内視鏡
狂牛病の原因のプリオンは細菌やウィルスと異なり非常に消毒薬に抵抗性です。これはプリオンが遺伝子を持たず「化学的に非常に安定な蛋白質」のみから構成されるからです。
もし内視鏡がプリオンで汚染された場合は・・・・現時点で有効に消毒する方法はありません。(オートクレーブでも不活化されないとされています)
(もっともこれは内視鏡にかかわらずあらゆる医療機器に共通の問題ですが・・・)

 

正常なプリオン(A)はα螺旋構造からなり、水溶性の「柔らかいタンパク質」です。容易に化学反応を起こします(消毒薬で変性する)。一方、高次構造の変化した病原性プリオン(B)はβシートを4つ持ち不溶性で「石の様に硬いタンパク質」です。化学反応を起こしません(消毒薬で変性しない)。


今まで内視鏡でプリオンが感染したという報告はありません。
しかしながらその可能性については専門家が議論しています。
現時点での専門家の考えを要約すると次のようになります。
(これは「科学者の予測」です。)

胃液、腸液および消化管にはプリオン蛋白は存在しない。 したがって、内視鏡検査でプリオン病が感染する危険性は、無い。胃・大腸癌が心配な患者さんが、プリオン病を恐れて内視鏡を受けないのは有害無益である。

しかし・・・例外が2つあります。


(1)一つは、脳や神経を直接見る特殊な、内視鏡です。神経細胞には、多量のプリオン蛋白が、あり感染の危険性があります。最近、神経内視鏡、内視鏡による脳外科手術という分野が開拓されていますが・・・・・・おそらくプリオンへの対策は大きな問題になるでしょう。

(2)「変異型 ヤコブ病(狂牛病)」では消化管粘膜の下にプリオン蛋白が存在します。したがって、細胞検査やポリープ切除を行うと処置具がプリオン蛋白で汚染されます。その場合は、どのような消毒をしてもプリオンは、不活化されません。

 


現在の「プリオン」への有効な対策は患者さんを区別することだけです。消毒では防衛できません


プリオン病の可能性のある方とは「アルツファイマー痴呆の方、痴呆が数ヶ月の単位で急速に進行している方。特にふらつき、めまい、ろれつが回らない、筋肉の異常収縮の見られる方」です。(もっとも当院の性質上、このような患者さんが、今まで来院はされたことはありません)です

一般の「脳血管障害(脳卒中)による痴呆、老化による記銘力低下」は感染の可能性は無く、当院での検査は全く問題ありません。