特殊な病態(a-FAP, HNPCC, SPS)で大腸癌のリスクが極めて高いグループの方は、通常の方と異なる対応が必要です。ここでは用語の説明は省略します。遺伝子の問題(生まれながらの体質)であり、治療法が無いものを悩んでも仕方が無いからです。
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(1)大腸癌検診を過剰に信頼するのは危険です
残念ながら、このグループの方は毎年内視鏡を受けても大腸癌になる可能性があります。絶対に癌になるという意味ではありませんが、リスクが高すぎるのです。
現状では「予防的手術(大腸の亜全摘)」は通常は選択されません。大変な手術であり、そこまでリスクが高いとは考えられていないからです。しかし外科医にセカンド・オピニオンを希望する場合は、お渡ししたUSBを使用してください。注意点はこちら -
(2)大腸以外の「他の癌の検診」も受けるべきです
大腸だけの問題ではなく、「全身に癌ができやすい」傾向があります。但し被爆の点からレントゲンを使った検診には慎重になるべきです。理由はこちら
しかし全ての癌を予防することは不可能です。お子さんが小さい方は、早めに生命保険・がん保険の契約を検討すべきです。癌の診断がついたらもう保険の契約はできません。 -
(3)お子さんへの遺伝について
残念ながらお子さんにも体質が遺伝している可能性があります。しかしお子さんに遺伝の話をすべきではありません。「我が家は癌が多いから、お前も検診を受けなさい」程度にしておくべきです。また現状では遺伝子検査をしても特に有益な事は多くありません。 -
(4)ライフスタイルの改善など総合的な対策が必要です
「定期的に内視鏡を受けていれば大丈夫」という発想は危険です。タバコなどの発癌物質を回避するライフスタイルの改善が必要です。こちらをお読みください -
(5)アスピリンの服用(米国での検討)
多くの方は予防手術は希望しないが、座して癌になるのを待つのは受け入れられないと考えます。現在、米国では、このようなハイリスクグループの方へのアスピリン服用が検討されています。アスピリンの最大の魅力は大腸だけでなく他の全身の癌(特に膵臓癌)に予防効果が確認されている点です。
主な臨床研究の要約
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2010年アスピリン服用で右側(盲腸・上行結腸)大腸癌発生が70%減少
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2011年アスピリン服用でHNPCCの方の大腸癌発生が60%減少
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2013年半分の服用量のアスピリンで右側大腸癌発生が減少したが他の癌は減少せず
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2014年米国癌協会(ACS)アスピリンの長期服用により、大腸癌の発症リスクが約40%低下する。
食道癌と胃癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌のリスクも10-20%低下する。
しかし副作用に対する懸念から、現在ACSは癌予防目的でのアスピリン服用は推奨しない。 -
2014年日本で行われた貴重な臨床研究です。アスピリン服用で大腸ポリープ発生が40%減少しました。
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2015年(1)心血管疾患のリスクが高く、(2)出血リスクが低い、(3)最低でも10年の平均余命がある、50-59歳の男女に対し、アスピリンを推奨。60歳以上の方は出血リスクが高いので推奨しない。
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2015年低用量アスピリン投与による大腸癌予防効果試験開始(J-CAPP StudyII)
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2016年大腸ポリープ・癌の既往のある方1万2千人で大腸癌の予防効果を調査。低用量アスピリンで大腸癌発生が30%減少した。アスピリン以外のNSAIDにも強い予防効果があるが副作用とのバランスはアスピリンが最善。
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2016年アスピリン服用群で大腸癌の20年死亡率が30%低下した。効果は服用開始10年後から認められた。
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2017年米国の医療従事者13万人で調査。
アスピリン服用で全死亡リスク(女性で7%、男性で11%)とがんによる死亡リスク(女7%、男15%)が低下。最も効果が大きいのは大腸癌(女31%、男30%)。他の癌では乳癌は11%、前立腺癌は23%、肺癌は14%、死亡率が低下した。
「体質的に大腸癌・ポリープのリスクの高い方」がアスピリンを飲むことで、かなりの予防効果が期待されることは間違いありません。
問題は、アスピリンには「出血しやすくなる」という副作用があるために「リスクとベネフィットのバランス」の点から患者さんに推奨すべきか否かの議論が医師の間で続いているだけです。
「出血しやすくなる」というのは、例えば脳出血や交通事故(頭部外傷)の時に死亡する危険性が高くなるという意味です。
日本で「正式な適応」が認可されるのは10年くらいかかるでしょう。理由は肝心の製薬会社がアスピリンの適応拡大に全く興味が無いからです。
「ハイリスク」と宣告された患者さんの中にも「大腸癌になったらアウトだ。正式なガイドラインが出るのを何年も待てない」と考えている方もいるでしょう。
「出血等の副作用を全て了解して、100%自己責任で服用したい」
と考える方にのみアスピリン(100mg)をお渡しします。
※100%患者さんの自己責任で、自ら情報を集め、自分で考え、判断していただいた方だけにお渡しします。これに関しては、お問い合わせ・御相談は一切お受けしません。
- (1)当院の検査で「a-FAP, HNPCC, SPSが考えられる、ハイリスクである」と宣告された方
- (2)60歳以下(副作用が出やすいからですが、70歳以上では効果が無いばかりか逆に癌を増やすという指摘もあります⇒2021年記事)
- (3)メタボリック症候群の傾向があり、動脈硬化のリスクが平均より高い
- (4)家族歴・既往歴で脳出血などの重大な出血性病気が無い
- (5)胃潰瘍など出血すると重大な事態になる病気が無い(アスピリンの重大な副作用が胃潰瘍です。高齢の方、よく胃が痛くなる方は、かかりつけの先生から胃粘膜保護剤を処方してもらい一緒に服用した方がいいでしょう)
- (6)ピロリ菌が陰性。(陽性なら除菌後であること)理由は(5)だからです。不明の方は検査を勧めます。
- (7)何らかの持病がある方は、かかりつけの先生に服用が問題無いかを確認して下さい(当院へのご相談は不可です)。また、かかりつけの先生が処方していただけるなら、それがベストです。
- (8)その他の副作用(胃潰瘍、喘息など)はバイエルン社の説明書をお読みください。通常100mgで副作用は少ないですが個人差があります。「血が止まりにくい」「アザがよくできる」「鼻血がよく出る」などが見られたら減量・中止をして下さい。
内視鏡検査の時は「必ず10日前から中止」して下さい。
(ポリープ切除後の出血を予防するため)
その他、何らかの手術を受ける場合も、必ず10日以上前から中止してください。
お渡しするのは
「バイアスピリン 100mg 錠(腸溶剤・低用量)が500錠入った一箱」です
(1日1錠 = 500日分)
1錠=6円なので原価が3千円です。これに事務手数料2000円を頂き、5000円でお渡しします。
大体1〜2年分なので、内視鏡の時に次の箱を入手するというサイクルになります。
御希望の方はメール等でご連絡ください。(取り寄せに10日ほど見て下さい)
注意!!
たくさん飲めば効果が大という訳ではありません!以前、Amazonで500mg錠を購入し自己判断で毎日服用されていた方がいましたが推奨できません!
副作用等でアスピリンが服用できない場合は、メトホルミンという糖尿病の治療薬が第2選択になります。(⇒詳しくはこちら)