総括:大腸癌の早期発見のために内視鏡を受けるのはナンセンスである

当院を受診されるような健康意識の高い方には、「常識の話」ですが、2019年の総括として、この根本的な問題を整理したいと思います。

癌を早期発見するなら内視鏡より簡単で精度の高い方法が他に多数ある

簡単な便潜血検査は「癌の発見率」では内視鏡と遜色は無いことが臨床研究で証明されています。驚く方が多いでしょうが、これが真実です。更に便中DNA検査は内視鏡よりも精度が高いという報告もあります。また内視鏡は「屈曲、襞の裏、残便が原因の物理的死角」が避けられませんが、CTコロノグラフィーなら、そのような死角はありません。
他にマイクロRNA、ctDNAなど多くのバイオマーカー検査が開発中ですが便の検査や血液検査は短期間に繰り返し施行できるという利点があります。微小な癌は内視鏡でしか見つからないという主張もありますが微小癌は短期間に発生します。「ひんぱんには施行できない内視鏡検査で早期診断をする」という考えは根本的に無理があるのです


しかし大腸癌を早期発見しても大腸癌死亡は減らない
「早期大腸癌の発見数が増加したが大腸癌死亡が減らない」という現象がここ数年、専門家の間で指摘されていました。大腸癌の早期発見の意義は小さい(死亡を防げない)が最新の分子生物学が出した結論です(2019年のNature他、超早期転移モデル)




大腸癌死亡を減らすことが証明されているのは「ポリープ切除(予防)」だけである
大腸癌に勝利する戦略は「癌の早期発見」では無く、「前癌病変への先制攻撃だけである」という意見です。米国では以前からあった考えです。例えばVogelstein博士(米国大腸癌研究の第一人者)達は2008年のProNAS誌に「ポリープが癌化するまでは長い。しかし癌化すれば転移は極めて早い」という「超早期転移モデル」を主張し、これが米国の「先制攻撃主義」の基になっています(全てのポリープをゼロにすべきであり、ゼロにしたなら当分は内視鏡は不要である、という考えです)。日本だけが、この理論を受け入れなかっただけです。




ポリープ切除により大腸癌死亡が減ることは臨床研究でも証明されています(下図 N Engl J Med 2012)。


将来は「薬でポリープを治す時代」が来るでしょう。10年以内と予測しますが、最近、有効なRAS阻害剤が開発されたので、もっと早まるかもしれません。何年後になるかは予測困難ですが、それまでは内視鏡(ポリープ切除)が唯一の手段であり、ハイ・リスクの方にとっては「それまでにポリープ切除で逃げ切れるか?」が勝負になります。




では「ポリープ切除」で大腸癌をゼロにできるか?

かって米国は世界最大の大腸癌大国でしたが、検診とポリープ切除で大腸癌死亡をピーク時の半分にすることに成功し世界を驚かせました。
しかし上のグラフは「半分は予防できた」とも読めますし「
半分は予防できなかった」とも読めます
「ゼロに出来るか?」これが現在の最大の課題です。2020年には、この問題(内視鏡後・大腸癌=Interval Cancer,PCCRC)を取り上げます