便潜血検査は「大腸癌の発見」「進行した腺腫の発見」において大腸内視鏡と比較して十分、遜色が無いという結果が2012〜2014年に海外から報告されました(下記)。便潜血検査がどこまで有効か?は長く議論されてきましたが、初めて無作為化比較試験が報告され議論に決着がついた感があります。「便潜血は精度が低いから止めて毎年の内視鏡がよい」という医師もいますが、これらの報告は、そのような考えが「迷信」であったことを証明しました。なお日本でも同様の「内視鏡 vs 便潜血検査」の比較試験が進行中ですが結果は出ていません(角舘STUDY)。
便潜血検査には平坦な病変は出血しにくいなどの欠点がありますが、内視鏡にも憩室や残便の中に微小な癌が隠れるなどの欠点があります。また便潜血は簡単に繰り返し施行できますが内視鏡は無理です。このように両者に欠点があるために、統計を取ると有意差が無くなる訳です
これらの比較試験の目的は多忙などの理由で内視鏡ができない場合に便潜血検査は、どこまで「サルベージできるか?」でしたが、予想以上に便潜血検査は良い結果を出した訳です
この問題は米国では、以前から議論されており内視鏡の対・費用効果などを考えると「ハイブリッド検診が最も合理的」と報告されています。
特に憩室など、何らかの理由で内視鏡に死角がある場合、「内視鏡を受けない年は、必ず便潜血検査を忘れないようにする」べきです。
便潜血の最大の問題は「痔で陽性になり不要な精密検査が増える」ことです。これは患者さんが細心の注意を払い、「スムーズに排便された良い便」を取るしかありません。「痔があるが、とりあえず便を取って出せばいい」という考えでは、便検査は有害無益でしょう。
「痔でないのに便潜血が繰り返し陽性になるが内視鏡では異常が何も見つからない」という場合の対応は非常に難しい問題です。内視鏡の死角(憩室の中や襞の裏側)に小さな癌があって出血しているのかもしれません。あるいは小腸に病気があるのかもしれません。痔が無くても排便時に粘膜がわずかに傷つくのかもしれません。僅かの可能性を追求して精密検査を繰り返すことは膨大なコストがかかります。どこまで追求するか?難しい判断になります。
現在、便潜血検査に代わる方法として「便中DNA検査」が注目されており米国の学会ガイドラインでも推奨されています。コスト、DNA解析技術などの点で、改善すべき点が多いのですが「痔では陽性にならない」点が高く評価されている理由です。将来は間違いなく便潜血検査に代わるでしょう。(現時点では日本での実施は困難です。詳しく・・・・)
便潜血 VS 内視鏡の主な比較試験
施行国・掲載論文 方法 結果 日本・角舘STUDY
進行中・結果未発表秋田県民
1万人でランダム比較試験便潜血と内視鏡で大腸癌死亡率の差を調べるのが目的ですが参加者が十分に集まらず苦戦されているようです。
既に内視鏡が広く普及してしまった日本では「便検査だけ」の人を十分に確保するのが難しいかもしれません。米国・CONFIRM STUDY
進行中・結果未発表米国一般国民
5万人でランダム比較試験日本・角舘STUDYの米国版ですが、内視鏡の医療費が高額な米国では経済的に内視鏡を受けられない人も多いため日本と異なり試験に参加する人が多いと予想します。 スペイン 2014年
(Gastroenterology)大腸癌の高危険グループ
2千人でランダム比較試験便潜血は大腸癌の発見率・進行した腺腫の発見率で内視鏡と比べて十分、遜色はない(僅かに劣るのみ) スペイン
2012年(N.E.J.M)5万人の
ランダム比較試験便潜血も内視鏡も大腸癌発見率は0.1%で差はない
今後大腸癌死亡率の差が出るかを調査する