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ピロリ菌の臨床研究の現状・・・・・・困難な臨床介入試験

(1)胃癌の患者さんのピロリ菌感染率を調べる研究

(2)動物にピロリ菌を感染させて胃癌を作る研究

の二つはいずれもピロリ菌と胃癌の関連を支持結果がでました

(1)は、以前は胃癌の患者さんでピロリ感染者は70%程度にしかすぎないといわれましたが、最近は精度の高い方法で調べると胃癌患者の99%がピロリ菌感染者でした

(2)はスナネズミにピロリ菌を感染させて実験的に慢性胃炎、胃癌をつくることができます。このモデルでは抗生物質でピロリを除菌して胃癌が予防される点も確認されました。


最後の科学的な証拠として必要なのが介入試験(くじ引き試験)です

「ピロリ菌に感染した人をくじ引きで除菌する人としない人に振り分けて胃癌の発生に差がでるかを調べる」研究で、いわば「最後の決め手」になる研究です


日本でも大規模な研究が企画されたのですが、患者さんが十分集まらなかったことからうまくいきませんでした

欧米の介入試験もいくつかおこなわれましたが事情は似たようなもので多くは「失敗」のようです

なぜ失敗したか?・・・陽性者から胃癌が発生するのは年間0.4%です。研究期間(通常は、5〜6年です)の間に「統計的に有意な数の胃癌患者さんの発生を見る」ためには母集団が数千人規模が必要です。テレビCMなどを使い全国から参加者を募りましたが・・・結局232名の方しか治験を完了しませんでした。(1)除菌を希望する方が多すぎてくじ引きにならなかった(2)経過観察中の検査(胃カメラ)がいやで脱落者が多すぎた・・ためでした。

このため「発癌率」の差を解析はできず最終的に「除菌により胃炎が改善される」ことが示されるにとどまりました。(完全ではありませんが目的の半分は達成されたといえます)

くじ引きで除菌された人 116人 胃炎が改善 72人
くじ引きで除菌されなかった人 116人 胃炎が改善 17人

 

試験結果の新聞報道