当院の目指す「精密治療型」大腸内視鏡・・・・鈴木雄久

持論ですが・・・・大腸内視鏡には二つのスタイル(方向性)があります。
一つは短時間で検査を終了させ大量処理を目指す方向で、もう一つは十分な時間をかけた精密検査・治療を目指す方向です。ここでは当院が目指す「精密治療型」の特徴を述べたいと思います。

第一に検査に十分な時間をかけます。
大腸内視鏡では「質よりも早さ・量が大事である」という意見もあります。これは「ポリープの癌化はSlow Growingであり、内視鏡の挿入が成功すればポリープ切除による大腸癌の予防は容易である」という楽観論があるためです。
しかし明らかになったことは・・・大腸内視鏡が普及したにも関わらず大腸癌死亡率が期待されたほど減少していない、先進的施設でも重大な見落としが多いという現実でした。(この問題の詳細は「検査の精度」を)。

当院では1検査に30分の時間を当てています。(更に時間をかけるオプション検査も用意しています)。十分な時間をかけ低リスク病変もターゲットにします。
なぜ、低リスク病変もターゲットにするか?それは過去に「低リスクと思われた病変(過形成ポリープ)が実は高リスクだった」という「医学の過ち」があったからです。 (この問題の詳細はこちらを・・・)



    実際の検査の模様・・・・サンプルとして1日分の全ての検査の結果を資料にしました


第二に検査の苦痛が無く麻酔が不要です。

大量処理型では短時間での挿入を目指すために内視鏡を強引に押し込むことになります。腸管にループが形成され痛みが強いため、モルヒネ系麻酔薬(オピスタン)を使うのが一般的です。患者さんは寝ている間に全てが終了し、「流れ作業」により、回復室が映画「COMA」のようになります。「苦痛無く効率の良い」システムなのですが、このような方式の流行に、多くの専門家が警鐘を鳴らしています。

私が1998年に内視鏡学会で発表した直線的挿入法では内視鏡が腸管に張力を加えずにソフトにゆっくりと挿入れます。その結果、大部分の方は「機械が入っている異物感」さえも感じません。
精神的緊張をとるため、軽い鎮静剤を使いますが、 ちょうどお酒に酔ったような状態になり、心地よくリラックスするレベルです。
患者さんは検査後直ちに着替えていただき、医師から結果の説明をおこない、すぐに帰宅できます。
なお、鎮静剤の使用を希望されない方には使いません(全く問題ありません)


当院の挿入方法がいかに優れているかの実績を公開しています。他院失敗・再検査の実績資料 




第三に当日にポリープを切除し、1日で検査・治療が完結することを原則にします
このようなことが可能なのは1検査に十分な時間を当てているからであり、上記の挿入法により、鎮静剤の必要量が「極少量」ですむからです。
つまり切除に当たって「癌化のリスク・切除後の出血のリスク・切除後必要な安静期間」などをその場で患者さんに確認を、とれる訳です(インフォームド・コンセント)。
   


当院の方針
現在、大腸内視鏡の処理能力は需要に追いついておらず、多くの大学病院が予約が数ヶ月待ちという現状であり、最近は、学会でも問題になっています。
そのため、多くの施設で「大量処理型」がやむを得ないというのが実情です。

当院の予約の混雑もかなりひどい状況なのですが、今後も可能な限り「精密治療型」を堅持するつもりです。
理由は、これが患者さんに最も有益であると確信し、自分も患者なら、これを望むからです。
私は数年毎に自分のクリニックで自分で自分の「精密治療型大腸内視鏡」を施行しています。


その他・・


ポリープ切除後の再検査の間隔(ガイドライン)について・・

*ポリープ切除後の安静・注意について