以下の現象は分子生物学の世界では30年以上前に解明された有名な話です。

初期の癌細胞は、外部からの増殖因子に成長を依存します。しかし、培養を続けていくと「腫瘍進化」が起きて、「外部からの増殖因子が不要」になります。腫瘍細胞が、内分泌細胞に進化し、自ら増殖因子を分泌するようになるからです。ParaCrine,AutoCrineと呼ばれる現象です。

これは治療の上で重要な意味があります。

この状態の癌は「Oncogene Addictuon」を起こしているので、逆に治療のチャンスがあるのです

下の図はhttp://cancer-research-decoded.blogspot.com/2012/02/can-tumors-undergo-rehab.html より引用したものですがOncogene Addictionを非常に解り易く解説しています




内分泌化細胞した大腸癌は何を分泌しているのでしょうか?

WNTではありません。WNTの下流に、十分な変異が蓄積しているはずなので、もう外からのWNTの供給は不要になっているはずです。

同様の理由から「EGFなどのチロシン・キナーゼ型受容体に作用する増殖因子」でもありません。

通常の大腸癌で起こる「基本変異(下図)」とは異なる増殖因子系、例えば「3量体型Gタンパク」「デルタ・ノッチ」「腫瘍のサイズを決めるYAP」などが候補でしょう


下図は2019年の記事 2018年の記事で紹介した物で、米国TCGAプロジェクト(大腸癌ゲノム解読)の結果です