大腸内視鏡の観察時間と精度の関係を調査した報告



 12人の「平均的な技術を持つ大腸内視鏡の専門医」が調査対象として選ばれました。(文献

この観察時間とは「何も異常なしだった」場合の検査の観察時間です。

医師 A は異常無しでも観察に17分かけていました。そして医師 A は平均1個の腺腫を見つけていました。

しかし5分以下の医師 B は0.1個(患者さん10人で1個)しか腺腫を見つけませんでした。



ここからが重要!

かなり大雑把ですが上のグラフの縦軸は「腺腫の発見率」に置き換えることができますから医師Aの腺腫の発見率は医師Bの7倍前後と仮定していいでしょう。

すると・・・・

「医師Bに検査を受けた患者さんは肺癌並みに高確率で大腸癌で亡くなるが、観察時間が3倍の医師Aに検査を受けた患者さんは、ほとんど大腸癌で亡くならない(熱中症並み)!」という事実が導かれるのです

つまり「観察時間と内視鏡後・大腸癌の死亡率は大きく逆相関する」のです。どうして、これが言えるのかは詳しくはこちらにありますが以下に簡単に説明しますと・・・



医師の腺腫発見率が1%上がると、患者さんの大腸癌死亡率が5%下がる(2014年の米国の報告:N Engl J Med 2014; 370:1298-1306

 内視鏡を担当する医師の腺腫発見率 日本全国で1年間に大腸癌で亡くなる方の数
 0%
(内視鏡を受けない場合)
2万7千人
(肺癌に次いで2位) 
 10% 1万8千人
 20% 9700人
 30% 5700人
 40%  3500人
 50%  2100人
(交通事故並み)
 60%  1100人
70%  700人
(熱中症並み)
上記報告を基に計算した理論的予測値。日本人全員が「腺腫発見率70%の医師(上のグラフの医師A)」に検査を受けたと仮定すると・・・大腸癌で亡くなる方は年間で700人(熱中症並み)になる

この問題は、米国のマスコミで大きな話題になりましたNewYorkTimesの記事)



日本の内視鏡のエキスパートの観察時間は平均すると「7分〜12分位」です。

日本の実情を考慮すれば、これは「十分、許容範囲と言える時間」ですが、「理想的な時間」では無い訳です。