現在の日本で大腸内視鏡の専門医は、どの位、観察に時間をかけているのでしょう?

この問題は検査を受ける方には切実な問題です。

そして、我々専門医にも大変、興味深い話題です。


残念ながら非常に重要な問題なのですが学会で調査した正式な資料はありません。


この理由は・・・・客観的、厳密、公平な測定が現実的に難しい(抜き打ち検査が必要)からでしょう

しかし「医師の公言した時間」ならGoogleで簡単に調べることができます。「大腸内視鏡 検査時間」で検索すると検査時間をWEBで公開している施設の情報が多く得られます

これは医師の自己申告ですが十分に参考になります。「挿入に要する時間」を実際よりも1〜2分、短めに公言する医師は多いですが、多くの医師は観察時間には、ほとんど配慮していないからです。


まず・・・総合病院のHPでは「検査時間は15分〜30分。時に1時間くらいの場合もあります」と記述していることに気づきます。

これは1時間かけて観察をするという意味ではありません。初心者(研修医)が挿入に長時間かかる場合があるので了解下さい、という意味です。



従いまして総合病院は除外して大腸内視鏡のエキスパートが専ら、検査を担当する大腸内視鏡の専門クリニック、専門病院のデータだけに注目します

すると下の表のような結果が得られます
施設 WEBでの文言
  東京 Tクリニック  検査そのものの時間は15分程度です
 埼玉 Tクリニック  検査時間:15分くらい
 福岡 Kクリニック  総じて検査時間は観察終了まで15分くらいです
 栃木 Uクリニック  検査 15分
 埼玉 T病院  検査自体は15分程度で終わります
 神奈川 Rクリニック  検査自体は10分から15分くらいで終わります
 和歌山 Kクリニック  通常検査時間は10分から15分前後です
 東京 Sクリニック  平均の検査時間は15分程度(挿入(回盲部到達時間)3分、観察10分)です

この「検査時間」から内視鏡を大腸の一番奥まで挿入するのに要する「挿入の時間」を引いたのが観察時間(小腸から肛門まで戻る時間)になります。

挿入時間は日本のエキスパートなら3〜4分が平均ですから、「7分〜12分」が日本の内視鏡専門医が観察にかける平均時間ということが解ります。



この時間が長いか?短いか?これは、意見が分かれます

欧米はどうなのでしょう?残念ながらGoogleで「colonoscopy procedure time」で検索しても、ほとんど出てきません。唯一つCleveland Clinic の「30 minutes to 1 hour」というのが見つかるだけです

米国では大腸内視鏡の検査時間の問題がマスコミで大きく報道され話題になったため医療機関が公開することに慎重になっているのかもしれません。

「訴訟大国」である米国の医師は観察にどの位の時間をかけているのか?日本の「7分〜12分」というのは米国の標準と比較すると、どうなのか?という点を知りたい訳ですが・・・・正確な比較できる資料はありません。


米国のある精度管理に厳しい専門医は1検査に1時間を当てていると公言しています(文献)。この内、肝心の観察時間は40〜50分位でしょう。日本と比較すると、かなりの長時間です。しかし米国の大腸内視鏡の費用は50万円前後(日本の10倍)が平均ですから、「対費用効果」で比較するなら日本の内視鏡の方がはるかに高いです。

「訴訟大国の米国では、高額な医療費で、かなり精度の高い検査を施行している医師がいる。一方、日本の内視鏡は観察時間が短いが多くの患者さんに廉価で対費用効果が非常に高い検査を提供している」という実態が何となく解ります。