保証システムの意義について説明します


この「保証型検査」の意義は「癌が見落とされても金銭で補償されるので安心だ」ということではありません。
最悪の場合、命を失うのですから数千万円の補償には、大きな意味はありません。(なお、患者さんは、この補償を受け取っても当院の診療に納得がいかなければ、別に民事の損害賠償訴訟を起こすことが可能です)。
このシステムの意義は、医師が患者さんとリスクを共有するという点にあります。つまり頻回に補償金を支払う事態になれば医師は大きな負担を負うことになりますから、医師は常に「それだけの覚悟」で観察をおこなわなければならない訳です。

また「保証型検査」の意味は「絶対に癌にならないことを保証します」という意味ではありません。
大腸内視鏡検査後、数年以内に見つかる大腸癌は「内視鏡後大腸癌」「Post Colonoscopy Colon Cancer」「Interaval Cancer」などと呼ばれます。「大腸内視鏡・1年後の大腸癌」の頻度は500人~1000人に一人と報告されています。(資料

大腸には残便、憩室、ひだや屈曲の裏側が原因となる「観察の死角」が多少は必ずあります。また、急速に成長する微小な癌も稀ながら存在します。従って 、どんなに精度の高い検査をしても「内視鏡後大腸癌」を完全にゼロにすることはできません。そして、この事実があるために雑な検査をする医師でも「内視鏡後大腸癌」が起きても「不可抗力の事態です」と言い逃れができる訳です。

一方、検査の精度を高めれば「内視鏡後大腸癌」の頻度は低くなることも複数の臨床研究で証明されています。(文献 詳しく・・

頻回に補償金を支払う事態になれば医師は大きな負担を負うことになりますが、精度の高い検査を続ければ補償額は十分に許容できる少額に収まります。この補償制度により医師は常に精度の高い検査を持続することを強制される訳です。



また、この「保証型検査」にはポリープ切除の効果(限界)を調べるという重要な意味もあります
大腸内視鏡でポリープを切除することで大腸癌が70%ほど減少する、ということが臨床研究により解っています。(米国 National Polyp Studey
では精密な内視鏡をすれば大腸癌の予防を70%ではなくて100%近くにできるのでしょうか?これは世界中の大腸内視鏡の専門家が現在、大きな関心を持っている問題です。数年後には当院のホームページ上に「支払われた補償金の総額」を公開する予定です。補償額がゼロなら「精密な内視鏡で大腸癌の予防を100%にできる」という証明になります。補償額が多額なら「精密な内視鏡でも予防できない大腸癌が多数、存在する」という証明になります。

現在、日本では複数の施設で「ポリープ切除による大腸癌予防効果」を調べる臨床研究(Japan Polyp Study)が進行中です。この保証型検査は、いわば、当院が単独で進める「Hongou Polyp Study」なのです。(補償表で15万円の補償は保障というよりも、追跡調査をしたいので癌になったら連絡をいただきたい。それに対する御礼という意味です)


Q 日本の内視鏡は世界一と聞きました。どうして、そこまでしなければ精度が高い検査が受けられないのですか?
日本の内視鏡は「廉価な検査を多くの国民に提供する」という意味では間違いなく世界一です。しかし・・・最近の報告で「日本の内視鏡のレベルは、欧米と比較して、そんなに高くはない」という事実が明らかになりました。日本の内視鏡の医療費は極めて低額(米国の10分の1)です。材料費は日米共通なのに米国の10分の1の医療費で何故、日本の病院の内視鏡室は赤字にならないのでしょう?答えは日本の専門医は、非常に多くの検査をこなしているから(言わば薄利多売)です。総件数を増やせば、1検査に当てられる時間は短くなり精度が落ちます。残念ながら、これは当然なことです。多くの場合、日本の医師は見落としへの対策として「毎年の検査」を患者さんに勧めます。このようにして「毎年の検査」が推奨されれば・・・・来年は更に件数が増えます。そして来年は更に「一人当たりの検査時間が短くなり、更に精度が落ちる」ことになります。このような、悪循環は現在、日本の内視鏡検診に起きている深刻な問題です。
1回の検査に時間をかけて精度を高めることで、この悪循環を断ち切ることができるか?これが「Hongou Polyp Study」の最終課題です。