粘液癌以外の特殊な大腸癌の研究


粘液癌・印鑑細胞癌の研究を皮切りに、これ以外の「特殊な大腸癌」の解析も進んでいます(下表:2019年Reviewより)。

髄様癌、リンパ上皮癌、更に 低悪性度管状腺癌(LGTGA)、絨毛癌(腺腫様癌、乳頭癌)、ラブドイド癌がMSI陽性であることが解りました。今後は、これらの癌に免疫チェックポイント剤が試されるはずです。

臓器横断的化学療法
通常、抗癌剤の適応は臓器別に決められています。しかし(1)BRAF変異がある場合のRAF阻害剤の使用(2)MSI陽性の場合の免疫チェックポイント阻害剤の使用(3)Fusion遺伝子NTRAK陽性の場合のNTRAK阻害剤の使用、などは臓器は関係無く遺伝子変異から化学療法が選択されます。そして最近、保険適応もこの方向になってきています。



 病理学的名称  悪性度  局在  遺伝子変化
 髄様癌  低分化だが低い  右  MSI、BRAF
 リンパ上皮癌  低分化だが低い  左に多い MSI、EBウイルス陽性
 GALT癌(リンパ上皮癌の
亜型という意見もあり)
 極めて低い
再発:転移の報告無し
 右=左  MSI陰性、EBウイルス陰性
 CC型(くし状、ニキビ状)  高い  右=左  不明。MSS?,CIMP
 微小乳頭癌(MPA)  高い  直腸と右側  p53,KRAS,CIN,BRAF
 低悪性度管状腺癌(LGTGA)  低い  右=左
回腸にも発生する
 IDH1,KRAS,MSI
潰瘍性大腸炎に合併する
 絨毛癌(腺腫様癌、乳頭癌)  低い  直腸とS字結腸  KRAS,MSI
 扁平上皮癌(SCC)  高い  直腸と右側  不明。慢性炎症と関係が深く、潰瘍性大腸炎
結腸・皮膚瘻、住血吸虫症、重複腸管に合併する
 明細胞癌(CCC)  高い  直腸とS字結腸  KRAS,MSS。ミューラー菅由来のタイプもある
 肝細胞様腺癌(HepAC)  高い  右=左  不明。迷走した肝細胞由来?血中AFP高値
 絨毛癌(胎盤様癌)  極めて高い  右=左  不明。迷走した胚細胞由来?血中HCG高値
 ラブドイド癌  極めて高い  右側  BRAF,MSI,SWI/SNF,centrosomeの異常
 骨化癌  通常腺癌と同じ  直腸  不明。KRAS?特別な意味は無いようだ
 紡錘状癌(肉腫様癌,SpCC)  高い  右=左  不明
 多型細胞癌  高い  不明  不明
 未分化癌(UC)  高い  右=左  不明。低分化癌、印鑑細胞癌とは生物学的に異なる。