DNAスクリーニングは大腸癌検診を変えるか?

通常、良性のポリープが癌化するのに5〜10年、かかります。重大な例外がHNPCC(遺伝性大腸)です。遺伝子修復機能に問題があるために短期間で変異が蓄積されます(ゲノム不安定性)。そのために微小なポリープが1年で進行癌になることもあり、しばしば「内視鏡後・大腸癌(PCCRC)]の原因になります。(詳しく



次世代シークエンス(DNA解読技術)の進歩で、現在は50万円ほどの費用で全ゲノム解読が可能です(参考
当然の流れとして・・・・・
まずDNA検査をして「ゲノム不安定性」を調べ、その結果に応じて内視鏡の検診間隔を決めるのが良いのではないか?という意見が出てきます。


まず結論から言いますと・・・・「DNA検査でゲノム不安定性を100%調べること」は現時点では不可能です

(専門的内容ですが、患者さんは何となく理解してください)人の遺伝子の数は3万前後と予想されていますが、細胞はゲノムを安定に維持するために多大な投資を行っており、ゲノム修復に関連する遺伝子(Genome Maintenance Gene)は、少なく見積もって1000個以上と予想されています。(The Cell 6版)。これらを、(RNAスプライス異常などのエピゲノム異常を含めて)完璧に調べる必要があり、現在の分子生物学はそこまで進歩していません

ただし、100%は無理でも、8〜9割の感度で「人に頻度が多いゲノム不安定性を調べる」ことは可能で、実用化もできるのではないか?と言われています。今回は、この話題がテーマです(難解です)

現在、最も広く行われているのはMSI検査です。次に多いのがポリープ・癌の検体を使った「DNA修復酵素の免疫染色検査」です。そして、最近、話題なのが「複数のDNA修復酵素遺伝子を調べるDNAパネル検査」です。これを追求した検査が「全ゲノム検査」で、最終的な究極の検査が「RNAまで調べる全・DNA/RNA検査」です。いか、これについて解説します

MSI検査




DNA修復酵素の免疫染色検査





DNAパネル検査




全ゲノム検査







全・DNA/RNA検査