ビランと紛らわしいUc型腺腫(最も危険で発見困難な前癌病変)
初めに
表面型腺腫(Flat Adenoma)の中で、陥凹している物をUcと呼びます。平坦隆起型(Ua)よりも、発見が難しく危険な病変です。
胃のUcは胃潰瘍・胃のビランとの鑑別が問題になります。この鑑別は「内視鏡診断学の核心」と呼ぶべき課題です。
内視鏡解像度の向上(特に2020年に登場したオリンパスの4K内視鏡)で「大腸の微小なUc型腺腫」が多数、見つかるようになりました。
当然の話ですが「大腸のビランとの鑑別」が大きな問題になります
以下の写真は2019年に秋田日赤から報告された典型的な「ビランと紛らわしいUc型腺腫」です。この報告は大きな話題となり、私も強い衝撃を受けました。
このようなタイプの病態は解明されていませんが、私見としてはGALT型腺腫(粘膜下腺腫)ではないかと考えています。或いはSuperficially serrated adenoma =SuSAの類縁なのかもしれません。いずれにせよ、表面の観察(Pit診断)が無力な病態です。
GALT型腺腫の発生機序 Superficially serrated adenoma =SuSA
以下は当院で経験した「ビランと鑑別の難しい腺腫」です。全て、病理で腺腫を確認済みです。また全て4K内視鏡で発見されたものです。
私見ですが・・・
このような病変は表面を拡大観察しても診断は不可能であり、現在の内視鏡診断の「限界を超えた病変」と言えます。現実的な対策は「典型的なビランと異なる」と感じたら、「コールド法で積極的に切除する」ことと考えます。もちろん「結局はビランだった(不要な過剰切除だった)」ということもあります。しかしコールド法なら重篤な合併症は稀であり、医師は切除を躊躇すべきではないと考えます。