最新の腸内細菌の研究では「善玉菌」「悪玉菌」という概念は「誤った過去の遺産」です。「善玉の乳酸菌(発酵)が小腸内細菌増殖症(SIBO)の原因」とか、「最恐の悪玉・クロストリジウムはアレルギーや大腸癌を予防する」ことが解り「単純に善悪は決められない」というのが定説です。
代わって最新の理論は「腸内細菌が多様であるほど健康に良い」です
これは「人とゴキブリはどちらが清潔?」という前の記事で紹介しました。答えはゴキブリで原始的な昆虫の腸内は無菌か1~2種類の菌のみです。これは細菌と共生する能力が低く、口から入った細菌を胃で全滅させるからです。
一方、最も進化した動物である人は「最も不潔(腸内細菌が多様)」です。しかし都会に住み加工された食事を食べるようになり腸内細菌の多様性が減っています。これが現代病の一因と予想されています。
古代人の糞の化石(糞石)をDNA解析したところ腸内細菌は我々よりはるかに多様でした。
胎児の腸内は無菌です。出産時にお母さんから腸内細菌を貰い、授乳中に皮膚から雑菌を貰います。しかし、まだ十分ではありません。最新のNatureの論文は、この問題を調べました。「保育園での乳児間の接触」でお互いに菌を交換し共有するようになることが解りました!![]()
Baby-to-baby strain transmission shapes the developing gut microbiome
ある著明な生物学者は、この論文を引用して「細菌叢の発達は言語の発達と同じ」と述べています。保育園で腸内細菌が多様になるのは「感染」ではなくて「学習」だという説です。日本人と米国人、同じ日本人でも北海道と九州では言葉が違うように腸内細菌も違うのでしょう。
また親しい者同士で握手や抱擁をする慣習も「細菌を共有する」という意味があったのでしょう。我々の本能は「魅力的な人=健康に良い細菌を保有している」「魅力を感じない人=健康に悪い細菌を保有している」と判断しているのかもしれません。
<余談>私は鬼才クローネンバーグの映画『アンチヴァイラル』を思い出しました。大スターの「ウイルス」を、ファンが自分の体に注射して「スターとの一体感」を得ようとする狂気を描いた作品です(作品はイマイチでしたが)。
【文責】 本郷メディカルクリニック 院長 鈴木雄久