以下の方はポリープの数に関わらず、原則としてEランクになります。これは決して「リスクが高いから」という意味ではありません。「リスクの予測が難しいから」という意味ですので、御了解を御願い申し上げます。
炎症性腸疾患の方
炎症が強い場合、大腸癌の発生率が高いことが解っています。問題は「炎症が軽度で僅かの方」「昔、炎症があったが今は治癒した方」「薬剤で完全緩解になっている方」の取り扱いです。このような方で、ポリープがゼロだったなら、どのように考えるべきでしょう?「大腸癌のリスクは低い(次回内視鏡は10年後)」でいいのでしょうか?やはり「大腸癌のリスクは高い(毎年の内視鏡が望ましい)」と考えるべきでしょうか?実は、この答えは解っていません。最近の研究では「単純な炎症レベルが発癌の原因ではない」という説もあります。

35歳以下の方
若年性大腸癌は通常の大腸癌と生物学的に異なる癌(新型・大腸癌)であることが解ってきました。若年性大腸癌に対しても「古典的なポリープ切除」という戦略が有効なのか?実は、答えは解っていません。若年性大腸癌が急増したのが最近10年以内なので臨床データが無いのです。

75歳以上の方
日本は人類史上例のない「高齢化社会」になりました。現在の医学の知見の多くは「平均寿命75歳の社会」から得られたものです。超高齢者・大腸癌に対しても「古典的なポリープ切除」という戦略が有効なのか?実は、答えは解っていません。

日本人以外の方
大腸癌の発生率が人種で大きく違う現象は米国では以前から大きな問題でした。白人と比べ米国系黒人は大腸癌が非常に多く「白人に合わせた標準的な対策」では不十分だからです。この違いが人種による遺伝的違いなのか?ライフスタイルの問題なのか?は、解っていません。
日本には多くの外国の方が活躍されています。遺伝的には日本人と同じ「モンゴロイド」の方もいますが、ライフスタイル(特に食生活)は違います。日本人よりも大腸癌のリスクが低い方もいれば、遥かに高い方もいるでしょう。果たして日本人と同じ大腸癌対策でよいのか?これはブラック・ボックスになります。