真の大腸内視鏡名人の見分け方は簡単(?)

医師にはシビアですが、患者さんには幸いなことに内視鏡は医師の技術が全て、患者さんに解る「ガラス張りの医療」です。(この点で外科手術は完全な密室です)

大腸内視鏡の技術を決めるポイントは以下のようなものです

<1>大きな病変・早期癌を安全に内視鏡切除する技術

<2>小さな早期病変を見落とさない確実な診断

<3>確実に盲腸まで挿入し検査を成功させる

<4>検査が苦痛無く施行され、患者さんが「内視鏡恐怖症」にならない

<5>内視鏡を介した感染の可能性=ゼロの確実な消毒

このうち「1」につきましては、私も大学に在籍していた時は最先端に立っていましたが(参考)、入院設備の無い当院では挑戦が許されませんので、関連病院への紹介となります(詳しく)。難しい病変の切除は、どんな名人がしても穿孔の可能性をゼロにはできないからです。

「2」は最も重要なのですが、実は最も難しいです。患者さんには信じられないでしょうが誰もが認める権威でも見落とすことがあります。断言できることは「観察の精度は医師の技術と集中力に比例する」ということです。そして大腸内視鏡の技術は「3」の客観的数字として出るということです。

「3」の検査成功率はシビアです。患者さんは「麻酔を使い無理に押し込めば入るのでは?」と思うでしょうがそうではありません。それをやれば大腸の壁が破れ最悪の事態になります。どんなに成功率が高くても挿入で穿孔を起こした医師は大腸内視鏡から「引退」すべきです。なお、ここで言う成功率とは「99.01%か?99.10%か?」というレベルの話です。内視鏡専門医なら「99%は常識ライン」です。

「4」は「極力、麻酔、鎮静剤を使わないという条件で」という但し書きがつきます。熟睡するような鎮静剤は問題です。鎮静剤の大量投与は脳に微小なダメージを与えます。熟睡するような内視鏡を毎年受けていれば・・・・将来、痴呆にっても不思議では無いでしょう(昔、ハルシオンという薬で、この可能性が大きな問題となりました。内視鏡で使われるセルシン、ホリゾン、ドルミカム、サイレースなどは同じ系統の薬です)

「5」は混合診療の認められない日本では「医師の問題というよりも行政・経済の問題」です。詳細は「消毒システム」のページをお読みください。ただし「医師の無知」から起こる院内感染もあります。2011年神奈川の日赤病院で起きた内視鏡のB型肝炎院内感染事故は、典型で(報道されたので御存じの方も多いでしょう)医師が消毒薬の使い方を正しく理解していなかったことが事故の本質です。そういう意味では「5」も医師の技術の一部と言えるでしょう。