消毒に完璧は無い


もし医師が「内視鏡は完全消毒しているので安全です」と言ったら、それは航空会社が「飛行機は落ちません」と言うのと同じです。消毒を強化することで「感染の可能性」は指数関数的に小さくなりますが「ゼロ」になることは無いです。「感染の可能性」よりも「胃癌・大腸癌の危険」の方がはるかに高い場合に内視鏡検査を受けるメリットが保証されます。

最も解り易い例はHPV(パピローマウイルス)です

これは、コンジローマという肛門周辺の皮膚病で、癌化することがあります。原因はパピローマ(HPV)というウイルスで、伝染病(性行為感染症)です。最近、子宮癌の原因ウイルスをワクチンで予防しようと話題になっているウイルスです。
このウイルスは内視鏡を介して感染する危険性が以前より問題になっていました。現在の消毒法で、このウイルスが消毒されるか?というと実は「確実な証拠」はありません。このウイルスは培養実験ができないために消毒の効果を判定できないのです。
確実ではないが、おそらく消毒されるだろうという推定しかありません。このような「未確認ウイルス」は実は他にも多数あります。専門家の多くが「おそらく現在の高レベル消毒で未確認ウイルスも死滅するはずだ」と推定しているのですから必要以上に不安になる必要はありません。しかし消毒時間を倍にすれば消毒の効果は倍になる、ということに専門家の誰も異論はありません。

ガイドラインの先を行った当院の「強化消毒法」
定説として、フタラールまたは過酢酸で5分間消毒すれば十分とされています。これで、肝炎ウイルス、AIDSウイルスは確実に死滅するからです(高レベル消毒薬)。
しかし、これは「100%の安全」を保証している訳ではありません。
高レベル消毒薬が発売された当初、日本のガイドラインは「フタラールで5分間消毒」でした。日本中の内視鏡検査が、この消毒方法で施行されました。しかし、米国(FDA)のガイドラインは「12分」で、日米に「差」がありました。当院は導入当初(2004年)より「フタラールで15分間消毒」としてきました(当院独自の方法で強化消毒法と呼んでいました)これは「時間を延長することで確率的に安全性を高める」という思想からです

当院は異端視されましたが・・・・・・・・・2014年、学会はガイドラインを、改正し、「フタラールの消毒時間を10分間」に変更しました。


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