当院を受信された方は、よく御存じですが当院のトイレには「衛生上の理由よりウオシュレットをお勧めしません」と注意書きがあり、代わりに「お尻ふきシート」を常備しています。
時々患者さんから「ウオシュレットは安全でないのですか？」という質問を受けます。
もちろん御自宅で家族と使用されるなら「危険性は許容範囲」と考えます。ウオシュレットで感染する病気はお風呂でも感染するからです。
しかし。病院など「不特定多数の方が使用する」トイレではどうでしょう？
最近、この問題の報告が出てきました。ここでは私の「個人的見解」は述べず、文献・報告を紹介します
２０２１年 亀田医療センターからの報告
病因でのウオシュレットの使用は薬剤耐性菌（抗生剤の効かない病原菌）の院内感染の原因となる。
２０１７年東邦大学からの報告
大学病院のトイレのウオシュレットのノズルが「MRSA（メチシリン耐性ブドウ球菌）」など、多くの薬剤耐性菌で汚染されている
２０１８年東邦大学（上記とは別の研究室）からの報告
ウオシュレットを３年間使用しても泌尿生殖器の感染症の増加は観察されなかった（但し肛門の感染症は調べられていません）
また、この報告はウオシュレットは「非・医療機器」であり、通常の医療機器のような安全性を確認する臨床試験を経ていないという点を問題視しています
上記は細菌感染（院内感染）の話なのですが・・・
正式な文献では、まだ報告が無いのですが「ウオシュレットが肛門のHPVウイルス（肛門癌の原因）感染を起こすのではないか？」という問題提起をしている先生も少なくありません
２０２３年 健生会奈良大腸肛門病センターから大腸肛門病学会への寄稿より引用
現時点で注目すべき報告は以上です。
最近のクリニックでは「トイレにウオシュレットをつけるのが常識」となっています。快適性を重視しているからです。
医療機関でウオシュレットを使うか？正式なガイドラインも法的規制もありません。患者さんが自己責任（防衛）で決める問題となります。
