内視鏡後・大腸癌(PCCRC)の除外規定

PCCRC-Rate=(内視鏡後・大腸癌の実数)÷(全大腸癌の実数)以下の式で計算されるのですが、いくつかの「除外規定」があります


(1)まず「粘膜内癌」はPCCRCには入れません
これはWHO(国連の機関)でも「粘膜内癌は大腸癌とは言えない」と明確に定義しているからで多くの専門医の一致した見解です

(2)前回の検査が「洗浄不良」の場合もPCCRCには入れません
これも多くの専門医の一致した見解です。憩室多発、高度癒着、過長で屈曲が多い腸については「甚だしい場合は除外する」という点では異論は無いのですが、「軽度まで除外するべきか?その基準は何か?」については見解が分かれます

(3)前回の検査が半年以内の場合はPCCRCには入れません

例えば、最初の検査で「ポリープが多発しており、全てを切除しきれずに残りを次回とした」が「残したポリープが予想よりも急激に癌化した」などはPCCRCに入れないというルールです
すると「最初の検査は観察のみとし、切除は次回に」と複数回に分ける方針の医療機関は、見かけ上のPCCRC-Rateは低くなります。また全ての患者さんに「半年以内の再検査を勧める(過剰検診)」医師も見かけ上のPCCRC-Rateは低くなりますから、この「半年以内除外」には異論もあります

(4)他院で見つかり紹介された癌は除外すべきではないか?
大学病院などは、そのようなケースが多いのでPCCRC-Rateの分母が大きくなり、見かけ上PCCRC-Rateは低くなります
自院で発見した大腸癌だけを対象にするべきなのですが、除外している報告は少ないです

(5)過去に大腸癌を手術した既往のある方を除外すべきか?
これも除外してPCCRC-Rateを計算している報告が多いのですが、除外すべきではないという意見もあります

(6)ガイドライン(医師の指示)通りに再検査を受けなかった患者さんの癌は除外する?
この除外規定を採用する報告もありますが、異論もあります

(7)ハイ・リスクの方は除外する
炎症性腸疾患の方、ポリープ多発症(FAP,SPS,HNPCC)の方を除外するというルールですが「重症型を除外する」という点では異論は無いのですが、「軽症型の方まで除外するべきか?軽症型の基準は何か?」については見解が分かれます

(8)内視鏡が一番奥まで挿入するのに失敗した場合は見えなかった部分に発生した癌は除外する

どこまで挿入されたかは正確には解らない訳で、この除外規定を認めると「内視鏡の下手な医師は見落としが少ない」という不自然なデータが出てしまいます


このようにPCCRC-Rate(内視鏡後・大腸癌比率)の計算には、問題も多く、除外規定を無くすべきであるという主張があります。

除外規定は「PCCRCが見つかってから後で決める」べきではなく「内視鏡検査直後に決めて患者さんに告知すべき(例えば憩室が多すぎるので精度を保証できません、と説明する)」ものと考えます。当院の精度保証システムはこの方針です。

やはり「腺腫発見率が最もシンプルで合理的な指標(医師の成績表)ではないか」という意見もあります