大腸癌を起こす悪玉菌CRC microbiota 大腸癌細菌叢)の研究

2018年の報告では「7種類の悪玉のCore Set」が同定されました。更に2019年のNatureに、二つの報告(文献 文献)が行われ最終的に「29種類の悪玉のCore Set」が同定されました

では、腸内細菌が発癌の原因になるのは何故か?といいますと(1)粘膜に炎症を起こすから(2)胆汁を化学変化させるから(3)直接、発癌物質を産生するから、という3つのモデルが提唱されています

炎症モデル
「発癌性のある腸内細菌」=「腸に炎症を起こす」であるという報告が多いです。また、以前に紹介した「癌の患者さんの便をマウスに移植する実験」では、「腸に炎症が起こる」ことも観察されています。
普段は炎症を起こさない腸内細菌が何故、炎症を起こすのか?ここに重要な鍵があると予想されています。現在、研究者が注目しているのが「自然免疫系(TLR受容体)」と「インターロイキン17」などですが・・・・・、「全体の解明」には程遠い状況です。



胆汁モデル

高脂肪食⇒胆汁⇒発癌物質という経路は「まず間違いない」とされています(Natuure文献 Cell文献)。そして胆汁の代謝(化学変化)に腸内細菌が重要な関与をしているという主張があります(2014年 Nature Revuew)



発癌物質モデル
腸内細菌の中には「発癌性のある物質」を産生する明白な「発癌性細菌」があります。しかし実際には、例外的な存在で、多くは見つかっていません。またピロリ菌と同様に「除菌することで大腸癌が予防できる」ことが証明された菌はありません」。代表的な発癌物質はCDTと Colibactinの二つです。産生する菌は大腸菌、キャンピロバクター、エンテロバクター、バクテロイデスなど多岐に渡ります。特定の菌が産生する、というよりも「菌の特殊なサブタイプ(株)」が産生します。これは、コレラ菌の多くが無害なのに、特別な株(エルトール型)だけが毒素を作るという現象と全く同じです。

また「最悪の悪玉菌」と考えられているフゾバクテリアは現時点では「発癌性のある物質」を産生している証拠はありません