見落としが非常に多い大腸癌検査

最近は、以前と異なり大腸癌の検査は苦痛も無く気楽に受けられるようになりました。読者の中にも定期的に大腸内視鏡を受けているという方も多いでしょう。大腸癌検査には便の検査、3DーCT、カプセル内視鏡などありますが、断トツで精度が高いのが内視鏡検査です。しかし、精度の高い内視鏡を施行しても結局は大腸癌の半分は見落とされるという報告が最近、米国であり米国のマスコミが「大腸内視鏡の有効性は疑問」という特集を組み、学会と論争になりました。



大腸内視鏡の「品質表示」

私たちが商品を購入する時、厳しい消費者の目で品質表示と価格を比べます。では医療はどうでしょう?多忙な医師に「先生の経験はどの位で、見落とし率はどの位ですか?」と逐一質問したら、医師から診療を断られるのが実情です。医師にとっても負担にならず、公正で患者も容易に情報アクセスできる方法で大腸内視鏡の「品質表示」ができないか?最近、米国を中心にこの問題が非常に注目されています。



腺腫発見率で医師の「目」が、どの程度かが解る

私たちが検査を受ける際に医師を選ぶ基準というと、どうしても「検査が苦痛が無いか?」「大腸癌を多く診療しているか?」「早期癌を開腹することなく内視鏡で切除できるか?」といった点に注目してしまいますし、マスコミもここを大きく取り上げます。もちろん、それはそれで大事な点なのですが、これらは大腸内視鏡の精度とは全く関係ないことが証明されています。意外なことに大腸癌発見率も精度と関係ありません。大腸では癌の診断は容易であり、癌化していない前癌病変(=腺腫)の発見が難しく、こちらが、より重視されます。腺腫発見率が高い医師に検査を受けるか、低い医師に受けるかで、その後の検査を受けた人の「大腸癌死亡率」が大きく違うということまで証明されており「腺腫発見率」は今、専門家の間では最も大きな話題になっています。


腺腫発見率と抜去時間で大腸内視鏡の品質が解る

高い腺腫発見率の医師に検査を受ければ絶対に安心かというと、そうではありません。検査の経験のある方はよく解ると思いますが、最近は大腸内視鏡を受ける方が非常に多く、人気のある名医はたくさんの検査をおこないます。医師も人間ですから無限に集中力がある訳はありません。その医師が「自分の検査」を、どれだけ丁寧に施行してくれたか?がもんだいになります。これは観察時間(内視鏡が盲腸に到達してから肛門までの抜去時間)で解ります。最近、米国では腺腫発見率と抜去時間で「大腸内視鏡の品質表示」をすべきであるという考えが広まっています。(実際には、まだ公開している医師は極一部のようですが・・・)



患者さんは賢い消費者になるべきである

一般の商品は「品質表示」が原則です。これがあるから消費者は「今日は廉いのにしておこう。今日は奮発しよう」と賢明な判断ができるのです。品質表示をすれば必ず大腸内視鏡の見落としがゼロになるという訳ではありませんが、これだけ大腸癌検診が盛んになり大腸内視鏡が「身近なサービス」なったのですから、これからは「商品としての品質表示」が必須になるでしょう。10年後には「品質表示」の無い内視鏡は「怪しい商品(ジャンク)」と見なされる時代になっていると予想します。


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内視鏡専門クリニック
胃癌・大腸癌の検査は色々な方法がありますが、当院は内視鏡を専門にしています。最も正確で、患者さんに、一番有益だからです。 次に示すのは当院で見つかった早期癌です。いずれも平坦で、レントゲンでは描出困難な病変です。

早期微小胃癌 平坦型大腸癌

「内視鏡が最も精度が高い」ことに専門家には異論がありません。

では、内視鏡を受ければ常に100%の精度が保証されるのでしょうか?

当院で経験した示唆に富む症例を挙げます

この方は近所の医院で注腸検査(大腸レントゲン検査)でポリープを指摘されました。最初に紹介された高度医療機関(国内トップレベルの病院です)で大腸内視鏡を受けましたが「異常無し」とされました。その後、当院で再検査した処、ポリープが見つかりました。病変は早期癌(グループ4)でした。この方は屈曲の多い腸で透明キャップ(写真で丸い半透明の枠の器具)で腸のヒダをめくるようにしてヒダの裏側を観察する必要がありました。

 

DVD-Rによる全検査録画サービス

上記の例から「当院の観察は完璧」などというつもりはありません。当院でも見落としの危険性は常にあります。

言うまでもなく内視鏡検査で最も大事なのは「観察の精度」です。

しかしながら・・・この部分は患者さんには「わからない部分」で、全て「医師の目」に委ねられます。

ご希望の方にDVD-Rによる全検査の録画を、おこないます。

当院は、これが内視鏡の質を保証する究極の手段と考えます。

検査中の医師の音声解説も録音されています。検査当日ファイナライズしてにお渡ししますので、一般の家庭用DVDプレイヤーで再生できます。料金は5千円です。



観察精度を上げるための機器について・・・
(実は観察精度は、医師の「経験・技術・集中力」で決まり、機器による差は本質的問題ではないのですが)当院では透明CAP、拡大内視鏡、ハイビジョン内視鏡、NBI(特殊光内視鏡)などの機器を使用しています。(詳しくは・・

 

 


精度の問題についてより詳しく(専門的な内容です。ここでは大腸検査について論じます)

録画して残すメリットとして次の点が挙げられます
  1. 録画することで医師の緊張感が維持されます
  2. DVD-Rの所有権は100%患者さんにあります。家族に記念に見せるのも、WEBやブログに公開するのも全て自由です。
  3. もし検査後早期にに大きな病気が見つかった場合に、前回の検査で見落としの原因が「検出が不可能だった病変」だったためか「医師の不注意」によるものなのかが判断できます。これは他の医師に見せてセカンドオピニオンを得れば明白です。
  4. 検査で何も異常が見つからなくても「検査で何か見落としがあったのでは?」という不安に悩む方がいます。神経の過敏な方なのですが、DVD-Rを確認することで安心できます

見落としの頻度はどれ位か?
これは内視鏡専門医にとっても永遠のテーマです。有名人が癌で手術を受けたという報道があると必ず「今まで専門家に検診を受けていたはずなのに」という話題がでます。実は見落としの正確な頻度は専門医を含め、誰にもわかりません。大腸ポリープを切除された方が、その数年後に再検査をするとまたポリープが見つかることが多いのですが、これは新しくできた病変よりも前回検査で見えなかった(見逃された)病変がサイズアップして見えるようになったのが多いだろうと専門家は予想しています。

なぜ死角ができるか?
仮に医師の技術が完璧で不注意がゼロと仮定しても、次のような「構造的死角」があります
  1. 内視鏡解像度の限界
  2. 前処置が不良で便や粘液が残り病変が隠れる
  3. 屈曲・ヒダの裏側が視野範囲からはずれる

 

内視鏡の解像度の問題
これは最近の内視鏡では問題にはなりませんが初期の低解像度電子スコープでは問題です。特に「平坦型病変」の発見率が違います。


これです・・

色素を散布して
判りやすくしてあります
平坦型腫瘍が、どこにあるか判りますか?  

上の写真の解像度を下げたものです。
たとえ、専門家でも認識は困難です


前処置(下剤)の問題
前処置として2リットルの大腸洗浄液が標準ですが、よりよい観察のためには4リットル以上が理想です(実際、昔はそうでした)。しかし多くの方が、その量に耐えられないので2リットルが標準(妥協点とも言えます)になりました。下剤が苦にならない方は大腸洗浄液を追加で飲めばそれだけ、よい観察ができます(ただし大腸洗浄液には事故の報告もあります・・・)。DVD-R録画は「何が見えたが」を記録すると同時に「どこが見えなかったか」を記録する意味があります

 

屈曲・ヒダの裏側の死角
これは「ヒダがたくさんある管状の腸」を「前方視しかできない内視鏡」で観察するためです(下図・左)。現時点では内視鏡の先端に透明CAP(フード)を付けてヒダの裏側をめくるように観察したり(下図・右)内視鏡を反転したりするしか対策はありません。しかし、 これらの手技はやりすぎると腸を刺激し検査後に腹痛の原因になるので「ほどほどにする」のが実情です。


将来、内視鏡機器が改良されて180度視野角のある機器が開発されれば、この問題は解決すると予想します(下図)


どこまで見つけるべきか?
大腸ポリープ(腺腫)が癌である可能性はサイズに比例します。2cmなら50%が癌です。5ミリ以下では「癌は極めて稀」です。胃にはスキルス癌(未分化癌)という微少でも転移する超悪性癌があるのですが大腸ではこのタイプは「極めて稀」です。
一般的には5ミリ(理想を言うなら3ミリ)以上の腺腫を見落とし無く観察すれば「十分に観察した」と考えるのが専門家の一致した意見です。

どこまで治療するべきか?・・当院はクリーンコロンを目指します
精密観察をおこなえば、多くの微小腺腫が見つかります。これをどこまで治療するか?は意見が分かれます
5ミリ以下の腺腫で癌がみつかることは「稀」です。これは間違いありません
その後の方針が二つに分かれます
(1)癌は「稀」なので切除せずに経過観察(定期的な拡大観察下内視鏡)でいい。
(2)今、癌でなくとも 腺腫は癌化する可能性を持っているから全て切除して「健康な腸=クリーンコロン」を目指すべきだ
・・・・という意見であり「どちらも正論」なのですが当院は、患者さんが「切除を希望しない」場合意外はクリーンコロンを目指すという立場です。理由は、その方が「再検査の間隔」が長くなり、結局は経済的・肉体的負担が小さくなると考えるからです

当院で切除した2〜3ミリの微小腫瘍の例
いずれも高度異型腺腫(癌化の直前の病変=グループ4)でした カルチノイド(悪性)です

癌化しないポリープについて
精密観察をおこなえば、多くの微小腺腫と同時に「癌化しない腺腫以外のポリープ(過形成ポリープ・炎症性ポリープ)」も多く見つかります。これらは原則的に切除対象ではありません。しかしながら放置した病変が実は悪性だった・・・ということもあります。DVD-Rの録画はこのような放置病変も正確に記録します

内視鏡所見は「炎症性ポリープ」ですが実は悪性です

過形成ポリープでもこのように、大きいものは
癌化の危険があり切除すべきとされています。


私見
検診を専門とする当院では内視鏡の質は(1)苦痛の無い検査(2)消毒レベル(3)観察の精度・・の3点で決まると考えます。
このうち(1)は患者さんに判りやすく評価が容易です。しかし(2)と(3)は患者さんには「わからない部分」で、保障は「患者さんの医師への信用」だけでした。しかし私は「科学的合理的な保証システム」が理想と考えます。
(2)に対して当院のステリスシステムでは「どのような消毒をしたかの消毒内容の保証書」を渡しています。
(3)に対しても「どこまで見て、どの程度の死角があったか」の保証書を渡すのが理想と考えますが内容が複雑で現実的には難しいです。DVD-R録画は保証書の代わりになると考えます。