憩室がひどくなると炎症で腸壁が硬くなります。すると、空気を入れても腸が広がらなくなり(拡張不良)、更に「狭窄」となります
このようになると「慢性的な腹部違和感」「慢性的下痢」などの自覚症状も出てきます
また、内視鏡で粘膜面を十分に観察できなくなり「癌の早期発見」は困難になります。
憩室の中に癌が発生して、腸管の外側に癌が広がると、ひどい場合は「腹腔内全体に広がった進行癌でさえ内視鏡では見えない」という事態が起こることが報告されています。(傍憩室膿瘍に発生した例、横行結腸に発生した例、膀胱結腸瘻と診断された例、直腸憩室に発生した例、憩室内に発生した癌が腹腔内に転移した症例。

これは憩室が筋層を欠いているために、ここに癌ができると容易に深部(腸の外側)に浸潤するため、粘膜面に異常が出にくいからだろうと考えられています。
上記のような、かなり進行した状態ならCTやMRIで癌の塊りを検出することができます。
大腸内視鏡をすれば進行癌が確実に解るという先入感は間違いです。異常な症状が続くなら内視鏡だけで終わりにせず、MRI・CT・PETなどの画像検査やバイオマーカー検査も検討すべきです
以上の理由から、ポリープの多い方、ハイ・リスクの方で「憩室が酷く死角が大きい」方には「内視鏡にCTコロノグラフィーを併用する(交互に受ける)」ことを推奨しています(ただし、早期発見にはなりません。)
憩室の治療法・予防法は?
憩室に有効なのでは?とよく議論されるのは以下の4つの療法です
(1)高繊維食(マウスの実験では有効性が確認されました)
(2)リファキシミン(非吸収性抗生物質。7日間/月を長期に服用しますレジメンが憩室に試みられています。 現在は「高アンモニア血症」のみに適応あり)
(3)メサラジン(潰瘍性大腸炎の治療薬。腸の炎症を抑える)
(4)プロバイオティクス
しかし、これらは厳密な比較試験で効果が確認されず、2020年の欧州のガイドラインでは「証拠はほとんど無く推奨することはできない。」と結論されています
従いまして「科学的に証明された有効な対策は無い」が答えになります