憩室がひどくなると炎症で腸壁が硬くなります。すると、空気を入れても腸が広がらなくなり(拡張不良)、更に「狭窄」となります

このようになると「慢性的な腹部違和感」「慢性的下痢」などの自覚症状も出てきます

また、内視鏡で粘膜面を十分に観察できなくなり「癌の早期発見」は困難になります。

憩室の中に癌が発生して、腸管の外側に癌が広がると、ひどい場合は「腹腔内全体に広がった進行癌でさえ内視鏡では見えない」という事態が起こることが報告されています。(傍憩室膿瘍に発生した例横行結腸に発生した例膀胱結腸瘻と診断された例直腸憩室に発生した例憩室内に発生した癌が腹腔内に転移した症例



これは憩室が筋層を欠いているために、ここに癌ができると容易に深部(腸の外側)に浸潤するため、粘膜面に異常が出にくいからだろうと考えられています。


上記のような、かなり進行した状態ならCTやMRIで癌の塊りを検出することができます。

大腸内視鏡をすれば進行癌が確実に解るという先入感は間違いです。異常な症状が続くなら内視鏡だけで終わりにせず、MRI・CT・PETなどの画像検査やバイオマーカー検査も検討すべきです

以上の理由から、ポリープの多い方、ハイ・リスクの方で「憩室が酷く死角が大きい」方には「内視鏡にCTコロノグラフィーを併用する(交互に受ける)」ことを推奨しています

しかし、早期発見にはなりません。早期発見しようと内視鏡で無理をすると・・・検査後に憩室炎を起こし、人工肛門になる危険があります。


2018年 「大腸内視鏡後に発症する急性憩室炎」に関する調査が米国から報告されました
論文要旨
大腸内視鏡検査23万6377例のデータを基に、急性憩室炎の発生状況を後ろ向きコホート研究で検討した。

その結果、検査後、68例(0.029%)が憩室炎を発症し、30例(44%)が入院していた。34例(50%)に憩室炎の既往があった。検査後に憩室炎を発症した症例の23%には再発が認められた。さらに、急性憩室炎発症後6週間以内に大腸内視鏡検査を実施した症例では、外科的介入が必要となった割合が高かった(100% vs. 36%、P=0.006)。通常はハルトマン手術という術式になり人工肛門になります。