ポリープ切除により大腸癌死亡率が半分になることを示した米国の大規模臨床試験(National Polyp Study 1980年開始、2012年最終集計完了)原著論文:Colonoscopic Polypectomy and Long-Term Prevention of Colorectal-Cancer Deaths7


この論文には「大腸癌死亡が半分も減った!」という評価と「半分しか減っていない」という評価の二つがあります。

全ての前癌病変(ポリープ)が治療されれば大腸癌は100%予防できるはずですから、この臨床試験の意味するところは「最終的に危険なポリープの半分が検査で見逃された」ということです。

検査を受けることなく大腸癌で死亡する方・・・・これは、ある意味、個人が選択した結果です。他人が、とやかく言う問題ではありません。

しかし医師の指示に従い定期的に内視鏡を受けたにも拘らず大腸癌で死亡する方が少なくない訳です。これは「仕方ない」では済まされない問題です。

これは米国のデータですが日本では、このようなデータは、まだ、ありません。日本の有志達により米国のNational Polyp Studyと同じ試験が遅れて開始しました(Japan Polyp Study)。この国内試験の中間報告は既に発表されていますが、大体、米国の結果と同じです。

   Nationai Polyp Studeyの20年前の中間報告では「大腸癌が76%減る」という、内容でした。また、この研究とは別にハーバード大学から「大腸癌の死亡が68%減る」という報告もありました。National Polyp Studは内視鏡を受けた人を定期的に追跡するという研究で、ハーバードの報告は医療関係者を対象に郵便アンケートで調査したものです。このように、調査の方法と報告のタイミングで減少の程度に違いが出ます。


米国ではポリープ切除後の大腸内視鏡の検診は3〜5年毎が普通です。「米国は検診間隔が長すぎる。日本はもっと検診間隔が短いから成績は、もっと、よくなるのではないか?」という意見も、あります。

しかし「大腸内視鏡は経済的・時間的負担が大きく、過剰な検診は好ましくない(全体で見ると大きな損失である)」というのが現在の考えです。

この問題は「検診間隔を短くせずに1回の検査の精度を高めて、もっと死亡率が減らせないか?」という方向で考えなければいけない訳です。



最近、米国では「検査の精度を高めて死亡率をゼロにできないか?」という議論が盛んです。

具体的には「前処置(下剤)の強化」「観察時間の延長」「機器の改良」の3つが焦点になっています

残念ながら、このような試みの効果が解るのは20年後です。このNatonai Polyp Study以上のデータは、現時点ではありません。