<内視鏡の消毒の進歩>
昔、「胃カメラ後急性胃炎」という「奇妙な病気」が学会で問題となりました。胃カメラを受けた人が翌日に急性胃炎を起こすのです。実はこれは胃カメラを介してピロリ菌が感染する「院内感染」であることが判明しました。学会はこの問題を重視し厳しい消毒のガイドライン(高レベル消毒)を作成しました。
ガイドラインが順守されれば、ピロリ菌、肝炎ウイルス、HIVなど「既知の病原体」が内視鏡で感染する危険はありません。安心してください。
(2011年、神奈川の日赤病院で起きた内視鏡による肝炎の集団院内感染事故が報道されましたが、これは使用期限の過ぎた過酢酸を使用したためでガイドライン違反があったためです)
・・・・ではガイドラインが順守されれば100%感染の可能性は無いか?というと・・・これは断言できません。
「未知の病原体・今までの科学の常識を超えた病原体」の場合は、高レベル消毒で死滅しない可能性は残ります。
最近、アルツファイマー病がアミロイドたんぱくを介する伝染病(プリオン)の可能性が報告され専門家が論争をしています。アミロイドは現在の消毒法では不活性化できません
内視鏡でアルツファイマー病が感染することが確認された訳ではありません。その可能性がありうるということです。その可能性は極めて低いものであり、「胃癌・大腸癌の可能性のある方」が感染に過敏になり内視鏡を倦厭するのは賢明とは考えません。同じ、プリオンが原因の変異型ヤコブ病(いわゆるBSE)で死亡した方は今までに日本では「一人だけ」(英国長期滞在者)ですが、胃癌で毎年5万人、大腸癌で毎年2万人が亡くなっているのですから・・・・・・
また、これは内視鏡に限りません。内科医が風邪のときに喉を見る器具から外科手術器具まで「全ての医療器具」に共通する問題です。
しかし内視鏡や歯科治療、子宮癌検診、眼科の外来手術、傷の外科的処置など「同一の器具で多くの人の組織・粘膜を傷つける医療行為」が最も深刻な問題になるでしょう。
現時点で可能な最大の防衛策として・・・・・私は、「過剰防衛」かもしれませんが、これらの医療行為はアルツファイマーの方と健常者で「医療機器」を分けるべきと考えます(文責:本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久)