蛍光内視鏡は革命を起こすか?

これは「大腸・COMの」ページと同じ内容です。今、国際的に最も注目されている研究なので当サイトでも紹介します

「特殊な波長の光を内視鏡に応用する」というアイデアは実は大変古いものです。東大で崎田博士が胃カメラを開発してすぐに、昭和30年代に東大で紫外線・蛍光内視鏡の開発が始まりました。しかし、それらは「初期の解像度の低いカメラで、何とか早期癌を見つけられないか?」という必要性から研究されたもので、カメラの解像度が向上すると研究は中止になりました。


世界最初の蛍光胃カメラの写真


最近、再び「最新の高解像度内視鏡に特殊光を応用し更に精度を高める」という研究が盛んです。それは「分子生物学・量子物理学」により生まれ変わった技術と言えます。

これは京都府立医科大学・髙松哲郎博士達が開発した蛍光内視鏡の写真です。通常は解りにくい大腸ポリープ(左)が、明瞭に見えます(右)

どうして、このようなことが可能かというと・・・・

「細胞は腫瘍化すると、酸素不足になりNADHという物質が増える」ことを利用してNADHが特異的に発光する波長の光を当てているからです。

少し「高校の生物」の復習をします・・・・

細胞は糖を分解しNADHを作り、最後は酸素を利用してエネルギー(ATP)を作ります

 

しかし酸素が無いとNADHは消費されずに蓄積します


このような技術が完成すれば「研修医が内視鏡をしても超微小な腫瘍を100%の精度で見つける」ことが可能であり「究極の内視鏡」と言えます

しかし・・・・・問題点もあります

第一に・・・腫瘍が酸素欠乏になるのは、かなり大きくなってからです。細胞分裂に血管の増殖が追い付かなくなり血管新生が起きる頃です。超早期の超微小腫瘍は酸素は十分にあります

第2の問題は・・・・・

酸素が欠乏してもNADHはATP産生のために「再利用」されます。腫瘍化すれば,直ちに「NADHが、どんどん、蓄積する訳」ではありません


わずか1個の超初期の腫瘍細胞内に「どんどん蓄積される物質」があります。それは「カテニン」というタンパクです

カテニンは正常大腸細胞には、ほとんど無くWntあるいはAPC遺伝子に異常が起こると細胞内に大量に蓄積します。事実上、「大腸細胞の腫瘍化」と「大腸細胞内にカテニンが蓄積する」というのは「イコール」なのです。


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理論的にはカテニンを特異的に発光させるような波長の光が見つかれば・・・・「研修医が施行しても、わずか1個の細胞から成る大腸ポリープも100%見落とさない」究極の内視鏡が完成するでしょう。

量子物理学と高分子構造学の進歩、スーパーコンピューターの進歩で、そう遠くない将来と思います(人の全ゲノムが解析され、今、全タンパクの立体構造の解析・データベース化が進んでいます。これが完成すれば、あとは・・・・相対性理論と量子論の方程式からスーパーコンピューターが答えを出してくれるでしょう)


 

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ACF
癌センター・落合,中釜博士の論文より引用。微小腫瘍にカテニンを蓄積している様子が特殊な染色で解ります。

未来の内視鏡は・・・・コンピューターが蛍光を自動検出し、自動的にレーザーで焼き「顕微鏡レベルの超微小腫瘍(これは専門的にはACF= Aberrant crypt foci  と呼ばれています)」を全て根治する。経験の浅い医師も全員が「見落としゼロの名医」になる・・・・そんな時代が来るかもしれません