「内視鏡後・大腸癌」を、どのようにして正確に調査するか?
内視鏡後・大腸癌を正確に調べる方法は全員の1年後の内視鏡の再検査ですが、通常診療では、そのような過剰検査は不可能です。そこで「過去に2回以上内視鏡を受けた方の記録」を調べる方法で代用されます。これは簡単なのですが、不正確です。何故なら内視鏡後・大腸癌は最初の病院とは別の病院で発見されることも多いからです。
なぜ、内視鏡後・大腸癌は表面化しにくいか?
内視鏡後・大腸癌は高度癒着・過長・屈曲の強い腸(=検査の難しい方)にしか起きません(短く真っ直ぐな腸なら見落としは起きない訳です)。そのような方は検査の苦痛から「次回は医師を変える」ことが多いために、最初の医師の技術が低いと内視鏡後・大腸癌が表面化しないのです。逆に技術の高い病院では「予約が混んでいる」ために、癌の症状がある患者さんは「待てないので今回は別の病院で・・・」と判断します。技術の高い病院も件数の多さから流れ作業になるため内視鏡後・大腸癌のリスクは決して低くありません。いずれにせよ「内視鏡後・大腸癌」は最初に検査をした病院とは別の場所で見つかる場合も多いのです。
「郵便アンケートで追跡調査をする」という方法もありますが、癌が見つかった患者さんは、アンケートに返信をする精神的・時間的余裕は無いでしょう。
つまり、医師が「内視鏡後・大腸癌はゼロです」と公言しても、その信憑性は皆無なのです。
「内視鏡後・大腸癌への補償」が現実的に可能な唯一の正確な調査法
当院の補償制度の第一の目的は「精度を向上させる」ことですが、同時に患者さんからの補償請求により「内視鏡後・大腸癌」が全て明白になるという意味もあります。「他医療機関で癌が診断された場合でも補償をお支払いする」という約束なので完璧な追跡調査が可能になる訳です。
また患者さんには「内視鏡を受けない年は便潜血検査を受けるように」指導しました(Hybrid検診)。臨床研究で『便潜血検査と内視鏡で大腸癌の発見率は差が無い』ことが証明されています(NEJM. 2012)。こうして補償制度とHybrid検診により「Japan Polyp Study(内視鏡後・大腸癌を調査した厚生省班研究)」と同等の調査が可能になった訳です。
大規模臨床研究としても大きな意義
「ポリープを経ない大腸癌は実在するか?」つまり大腸癌はPreventable Cancer(ポリープ切除でゼロにできる)か否か?これは長年の論争です。この論争を決着する上で、「研究参加者(患者さん)の途中脱落」が多いことが重大な障害でした。理論的に脱落者のいない当院の保証内視鏡は、この論争に最終回答を出すでしょう。
なぜ途中脱落が多いか?
内視鏡後・大腸癌を調査した厚生省の臨床研究「Japan Polyp Study」では4752名の参加者でスタートしたものの「2回目の内視鏡」を受けた人は2787名に減少し、「3年後の3回目」では760名にまで減少しました。患者さんは「忙しいから今年は止めよう」「〜病院が評判がいいから、そこで受けてみよう」「研究で決められた時期ではないが心配なので、他で早めに受けよう」などの理由で臨床研究から脱落する訳です。これはJapan Polyp Studyに限らず、国内外の臨床研究の大きな問題であり、「内視鏡後・大腸癌」を調査するための十分な患者さんの数が確保できなくなるのです。
これに対して当院のシステムでは「追跡調査から脱落する方」は皆無ですから、大規模臨床研究としても重要な意義がある訳です
臨床研究で真実は解らない
日本で初めて内視鏡後・大腸癌を調査した「Japan Polyp Study」は医学的価値の高い研究です。しかし「抜き打ちテスト」ではありません。臨床研究では医師に「調査されているから丁寧に検査しよう」という意識が働きますから、日常臨床の実態よりも良い結果が出る傾向があります。当院の補償システムは、一回限りの調査では無く、今後も永続していきますしデータの公表も続けていきます(毎年2800名前後が蓄積されていく予定です)