国際的疫学調査から大腸癌の危険因子を割り出す
大腸癌は乳癌と並んで代表的な「遺伝因子の強い癌」です。しかし、それでも遺伝以外の生活因子が重要である事実は変わりません。「アフリカの黒人は非常に大腸癌が少ないのに米国の黒人(遺伝的に同一)は、白人以上に大腸癌が多い」という調査が報告されていますし、30年以上前(日本では大腸癌が多くなかった頃)の日本の調査でも「ハワイに移住した日本人は白人以上に大腸癌が多い」と報告されています。このような「移民の国際的疫学調査で大腸癌の原因となる生活因子を割り出せるかもしれない」という研究が注目されています(2019年 Nature Review)
国によって45倍も違う
世界で最も大腸癌発生率が高い国は東欧のハンガリーで、逆に低いのはアフリカのガンビアで、その違いは実に45倍です。これは最貧国と医療最先進国の乳児死亡率の差(60倍)にも匹敵します
ノルウエーは「世界4位の大腸癌大国」なのですが、逆にスエーデンは非常に低く、両国の間では相互に移住が多いという伝統があるため、疫学調査の専門家は「よい研究材料になる」と注目してきました。(両国では移動は自由で、滞在許可証、労働許可証も自由で、ノルウェー住民の5人に1人がスウェーデン人という調査もあります。因みに日本は世界9位、韓国は世界2位で、どちらも大腸癌大国なので研究材料にはなりません)
(1)男性は生活因子、女性は遺伝因子の影響が大きい
(2)肥満の若い女性は直腸癌のリスクが高い