大腸内視鏡でポリープが見つかったら、切除は当日か後日か?

 

大腸癌は治療から予防の時代へ。
大腸ポリープが数年、経過して、癌化することがわかっています。 そしてポリープのうちに、内視鏡で切除してしまえば、大腸癌は100%近く予防できることがわかっています。 大腸内視鏡は早期発見よりも、予防的治療をめざしています。

しかしポリープ切除の方針は医師・施設によって大きく二つに分かれます

(1)最初の内視鏡では切除しない。場所の確認のために必要ならバリウム検査も後日、追加しポリープ切除術の偶発症(出血・穿孔)の「承諾書」を書いてもらい、
後日、入院の上、ポリープ切除をおこなう

(2)原則としてその場で切除する。場所の確認が必要なら「点墨=入れ墨、マーキング」をおこない、バリウム検査はしない。
ポリープ切除術の偶発症の「承諾」と術後安静の必要性は、その場で口頭でおこなう

かってポリープ切除が開発された頃(まだクリップも無かった頃」)は(1)が原則でした

しかし、大腸検査というのは、大量の下剤を飲んでおこなう1日がかりの検査です。これを数回おこなうのは患者さん(国家のGNPと言い換えてもいいでしょう)の大きな損失を伴います

現在では「予防的クリッビング(下記)」などの開発で「腕の確かな医師は(2)の方針。(1)は病院の利益と医師の保身(訴訟対策)のためで患者さんのためではない」というのが常識です

たとえば・・・・東大病院はESD(粘膜下層剥離術)という大きいポリープを切除する手技を開発した施設なのですが、最近、私の後輩の話ではESDも外来で、施行しているとのことです

 

 

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ポリープ切除後に予防的クリップをかけています。当然、入院はしていません。

参考資料

大腸ポリペクトミーにおける予防的クリッピングの有効性の検討  1996年第52回内視鏡学会より (鈴木雄久)

大腸ポリペクトミーの合併症として晩期出血はもっとも 高頻度で(0.5〜2%)、その予防も困難なのが実状である。 我々ばポリペクトミー後晩期出血に対すろ予防釣クリッビングの 有効性を検討した

<対象およぴ方法> 過去2年間に当院およぴ関連施設において施行されたポリペ クトミー症例の内、切除直後の出血例、出血傾向のある症例な どを除外した950例を、予防的クリッビングを施行する群と施行 しない群にほぼ同数となるようランダムに振り分けた。 ポリープの六きさ、肉眼型等については両群間に差ば認められ なかった。この両群において予防的クリッビングによって大腸 ポリペクトミー後晩期出血の頻度が異なるかを検討した

< 結果> 晩期出血ばクリッピング非施行群で5例(1%)、施行群では1 例(0.2%)に認められた.施行群にみられた出血例ば、茎に クリップを横断性にかけたことが原因と考えられ手技に若千の 間題が有る症例であった

< 結論> 以上より予防的クリッビングを施行する群での晩期出血の頻度 は明らかに低く本法の有効性が確認された

予防的クリッビングで出血を減らすことができるか?これは1990年代、専門医の重大な課題でした

それまでの報告は全て「後ろ向き試験」つまり、出血した患者さんグループでの「予防的クリッビングの割合」を「出血しなかった患者さん」と比較するというものでした

それまでは「予防的クリッビング出血を減らすことはできない。却って増加させる」という報告ばかりでした

医師は「出血しそうな危なそうな場合のみにクリップをかけていました」から当然の結論です。

真実を確かめるには「前向き試験、くじ引き試験」が必要です。上記の報告は世界で最初に予防的クリッビングの出血予防効果を東大病院で「前向き試験、くじ引き試験」で証明したものです。

海外誌に投稿する予定で論文も書きかけていたのですが、当時、東大にいた私は「新しい大腸内視鏡挿入法(無送気軸保持法、ストレート法)」の完成に1分でも多く時間をかけたい状態で(当時の東大の仲間といつも議論をしていました)論文は完成しませんでした。(文責:本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久)